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秘密結社の勇者様  作者: 龍華ぷろじぇくと
マザー → エクファリトスの王
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異世界転移3

 そこは、商店街だった。

 人通りはそこそこ。

 八百屋やら魚屋やらが存在するそこで、それは唐突に起こった。


 野菜を買いに来た主婦がいた。

 王利たちはそこからはまだ遠くで、ちらっと視界に霞める程度のよくある光景だ。

 八百屋と主婦がキュウリをもうちょっと安くみたいなことを話していたのだ。


 だが、八百屋は頑として値引きしようとはしなかった。

 焦れた主婦が声を荒げ始める。

 あーあ、この世界でもこういう事ざらにあるのか。と少し懐かしい気分になった王利の目の前で、衝撃的な展開が訪れた。


 主婦の剣幕に逃げるように奥へと引っ込んだ店主。

 少しして、散弾銃片手に戻ってくると、驚く主婦の頭目掛け、迷うことなく撃ち放つ。

 平和な下町にありえない乾いた音が一発。

 先程までクレーマーと化していた主婦の頭が一瞬で弾け飛び、モノ言わぬ骸が転がった。


「ったく、野蛮人どもはこれだか……がぁ!?」


 さらに銃声。店主が隣の魚屋のおばさんに猟銃で撃ち殺された。


「さっきから店の隣で五月蝿いんだよっ! ったく。商売の邪魔だよッ!」


 硝煙を吹く猟銃を片手におばさんは店内へと引っ込んで行く。

 一瞬の出来事過ぎて、見ていた王利も、最初の銃声でそちらを見た他のメンバーも唖然と見入っていた。

 周囲の人間は別段驚いた様子もなく、まるで日常風景とでもいうように素知らぬ顔で通行を続行している。


 ただただ王利たちだけが、不自然な程その光景に釘付けになっていた。

 当然ながら、死んだ主婦と店主は動きもしないし復活する事もない。

 完全に死んでいた。ただの口論で二人の死者が出た。


 ありえない。そう思っていた王利の耳に、痛てぇ!? と声が聞こえた。

 振り向けば、向いの靴屋の前で、女子高生に若い男がぶつかっていた。

 普通なら、女子高生が慌てて逃げるか、男が威圧的に挑発して来るところだろう。弱みを見せたら路地裏に連れ込まれるかもしれない。

 そんな場面を想像したが、現実はさらに凄惨だった。


 男がいきなりナイフを取り出す。

 「痛てぇじゃねぇかクソ女ッ!」とか言いながらナイフを突き出す。

 驚く女子高生だったが、避けることなどできず、胸にナイフが食い込んでいく。

 余りの素早い出来ごとに、王利は止めに入る隙すらなかった。


 また目の前で人が死んだ。

 そう思った次の瞬間、女子高生は手にした何らかのボタンを押す。

 ニヤリと嗤って見えたのは気のせいだろうか?


 次の瞬間、女子高生は、自身に巻きつけていたらしい爆弾で、男諸共盛大に爆発した。

 もはや、王利たちはその光景を唖然と見つめるしかない。

 こんな状況、自分のいた第四世界では絶対にあり得ない光景だ。


「W・B……次に行くぞ。さっさとしろ!」


 さすがにここに長く留まるのはマズいと察した首領が語気を荒げる。

 王利もこの世界には居るべきじゃないと慌てるように第六次元にメモリを合わせる。

 王利を中心にしてメンバー全員を引き連れ、次なる世界第六世界へと向う。




「ふぅ……さすがにアレは無いな」


 黒い雲に覆われた不毛の大地に出現した王利たち。

 開口一番首領が溜息を吐く。


「いやぁ、さすがに驚きましたね。私、あんな世界があるとは思いませんでした。あれじゃ正義の味方も商売上がったりですね」


「ちょっとの事で殺し殺される世界とか、殺伐とし過ぎでしょ。で、王利君、今度はどんな場所?」


「なんだか寂しい場所デス」


 真由、葉奈、ヘスティと口々に喋りながら辺りを見回す。

 どうやら直径1kmくらいの窪地に出現したようだ。

 なんだここ? と思いつつ王利たちは窪地を歩き、縁までやってくる。


 窪地から這い出ると、そこは最悪の光景が広がっていた。

 乱世である。

 機械、兵器を存分に使用した近代戦。いや、レーザービームや加粒子砲が飛び交う戦場が、どこかで見た事あるような人型機械が争い合う戦場が、果たして近代戦と言えるかどうか。


 光の聖剣を思わせる巨大な剣を振りまわす人型巨大兵器同士の戦いが両軍入り乱れて各所で行われ、時折彼らの一撃で王利たちのいたような窪地が作られている。

 兵器の一機が剣により串刺しにされる。途端、大爆発。これもまた窪地を作るのに一役買っていた。


「おい、何か来るぞ?」


 ひゅるると音が鳴る。

 それにいち早く気付いたエスカンダリオが空を見上げた。

 釣られて見上げた王利たちが見たモノは、核弾頭ミサイルの先端。

 今、まさに空中で破裂を行う直前だった。


「だ、W・Bぃッ!!」


 首領の切羽詰まった声が響く。

 皆咄嗟に王利の周囲に寄り集まり、王利は即座にメモリを捻る。

 咄嗟だったので思い切り捻ってしまい、次の目的地である第八世界に行くより先に、彼らは第十四世界へと旅立つのだった。


 そこで、とある邂逅が行われることになるのだが、それはまた、別の話である。

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