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秘密結社の勇者様  作者: 龍華ぷろじぇくと
マザー → エクファリトスの王
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異世界転移2

 王利たちはミカヅキ・メイフライと別れた後、人気のない路地に向うと、すぐに第五世界へと飛んだ。

 光に包みこまれ、数秒後、王利は先程までいた人気のない路地に立っていた。

 ん? と思いながらもメモリを見るが、そこは第四世界ではなく第五世界にメモリが向いている。

 つまり、無事に第五世界に飛んだはずである。


「ん? どうしたW・B? ここは先程いた場所の様だが?」


 首領も異変を察して聞いてくるが、王利には分からない。

 そもそもこの謎の道具自体使い方がよくわからないのだ。

 王利はただメモリに別の異世界が存在すると仮定して動かしているだけである。


「もしかしたら、第五世界は登録されてなかったのかもしれませんね」


「王利君、そう仮定するのは早いかも」


「葉奈さん?」


「ほら、タイムパラドクスとかそういう類いの話にさ、全く同じ世界だけどどこかが違ってる世界があるみたいなのあるじゃない?」


「ほう。つまりここは確かに第五世界で第四世界とは何かが違うと。面白い。ソレを探してから第六世界に向おうか」


 とりあえず王利の家を目指そう。ということになったので、安全の為にも全員が変身を解くことになった。

 ここで、予想外の事実が判明した。


「……ま、マンティス・サンダーバード……さん?」


「ああ。私がマンティスだが、なんだ?」


 マンティス・サンダーバードは、女性だった。

 真っ白な肌に腰元を過ぎた長いプラチナヘア。

 鍛え抜かれた見事なプロポーションには、さすがに王利も目を奪われた。

 男だとばかり思っていた人物が美女だったのだから仕方ない。ついでに葉奈より胸が大きいから仕方ない。


 ヤキモチ焼いた様に膨れて王利を睨む葉奈に、思わず言い訳する王利を余所に、ダンディなロシア男性へと姿を変えたベルゼビュート・ハンマーシャークが変身を解かないバグカブトとバグアントに不平を言っている。

 しかし、バグアントたちは聞く耳持たないようで、右から左に受け流していた。


「お~、着いたぞ」


 ドクター三菱の言葉で皆が足を止める。

 本当に存在した王利の家。

 もしも、ここが本当に第五世界だというのなら、この世界の王利がここに住んでいることになる。

 鉢合わせて、いいのだろうか?

 王利は思わず戦慄する。


 しかし、首領は臆することなくロクロムィスから降りて女性体になると、呼び鈴を押してしまう。

 ちょっと待って首領、この世界の俺に会ったら俺どうなるの!? 王利は心の中で叫ぶが首領はむしろ楽しそうにしている。

 やがて出て来るこの世界の森本王……っ!!?


「あの、どちら様で……きゃああっ!?」


 ドアを開けたとたん、首領の芋虫顔に驚いたその少女・・は尻餅をついていた。


「むぅ? 森本王利を訪ねたはずが、ここはお前の家か?」


「ひぇっ!? は、はい。森本若菜です」


 聞かない名前だ。俺に妹はいないので隠し子なのだろうか?

 が、次の瞬間、俺は戦慄した。


「若菜? お客さん? 何かあったの?」


 疑問交じりにやってきたのは、そう、見間違えるはずがない。

 王利と父親を捨て消えた母親その人だ。

 なぜ、この人がここに住んでいる!?

 思わず口を開きそうになって思いとどまる王利。

 ここは自分のいた世界ではない。いきなり責められても彼女は困るだけだろう。

 なにせ……


「若菜。お客様なら部屋に通しなさい。それとも客じゃないのか?」


 次に現れたのは、王利の現父親。

 そう、この世界に王利は存在せず、彼らは離婚しなかった。

 この少女、森本若菜が存在したせいなのか、まさに和気藹藹、親子生活を満喫しているようだ。


 その光景を見た時、王利は思わず殺意を抱いた。

 あれだけ俺に期待を押し付け勝手に落胆して勝手に離婚して壊れたくせに、こっちの世界じゃのうのうと幸せそうにしている自分の家族。

 その光景は、まるで若菜に自分の家族を全て奪われたような感覚だった。


 思わず力ある言葉を唱えようとして、エルティアに口を塞がれた。

 ハッと我に返ると、口元から手が外される。

 あ、危なかった。思わず、自分たちの両親に似たこいつらを殺しに向うところだった。


「スマンエルティア。助かった」


「いえ。ですが、これはどういう事なのでしょうか? あちらの父親は一度見たことがあります。勇者様の御父上、でしたよね?」


「ああ、この世界じゃ、多分俺の替わりにあの若菜さんが生まれたんだ。だから、俺はこの世界に存在していない。ついでに両親は離婚してないから幸せそうな暮らしを送ってる。多分、インセクトワールド社が存在していたとしても接触は全くないはずだ」


「じゃ、じゃあこの世界はやはり第五世界?」


「らしいな。随分と俺達の世界に近い作りだ。相違点が物凄く目立つな。頭がおかしくなる前に次の世界に向った方がよさそうだ」


「ところで、君たちは何者かね? コスプレかい? いや、それはどうでもいい。私の家に何か用かな?」


「……ああ、いやすまんな。この家に知り合いがいると噂を聞いたのだが、どうやら間違いだったようだ。森本王利という名前に聞き覚えはないか?」


「森本王利……いえ、ないですね。お役に立てず申し訳ない」


「こちらこそ、一家の団欒を乱してすまなかった。すぐに失礼させてもらうよ」


「いやいや。こちらこそ。野蛮人どもでないのなら問題はありませんよ」


 野蛮人? なんて思わず気になる単語を父親が言っていたが、王利たちはそそくさと家から遠ざかる。


「首領」


「皆まで言わずともよい。なかなか面白い世界だな。ゴキブリ男を倒した後にでも探索してみるか」


 首領が思いの外気に入ったらしく、間違え探しをしまくるぞ。と良く分からない気合いを入れていた。

 だが、そんな楽観的な考えは突如終わりを告げる。

 この世界の本来の姿が、今、まさに目の前に現れようとしていた。

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