VS 量産型ハルモネイア4
「ふぅ」
013984号機を倒した王利は、大きく息を吐いた。
苦戦するかと思ったものの、さすがに三人で戦ったせいだろう。結構楽に倒せた。
が、その瞬間、安心した王利に向けて013984号機の瞳が赤く光る。
本能的に危機を察した王利が慌てて避けようとするが、それより速く013984号機の目からレーザービームが放たれる。
さすがに、エルティアも魔法が間に合わなかった。
驚くヘスティに見られながら、王利は自身に二対のレーザービームを浴びる。
レーザービームは通過した。硬質過ぎるはずの王利の身体を難なく貫通してしまった。
自身に空いた穴に驚きを浮かべる王利。
初めて自身を貫いた攻撃に驚きと共に血が溢れる。
「肉体再生≪リジェネイション≫」
少し遅れ、エルティアが王利に魔法を掛ける。
それと同時にヘスティが013984号機の頭部を踏み砕いた。
膝を付く王利のダメージが癒えて行く。
空いたはずの穴は塞がり、攻撃を喰らっていなかったかのように元の健康な体に戻っていた。
「た、助かったエルティア」
「いえ。油断しました。敵は人型ですけど両断されても動くんですね」
「そうらしい、なっと」
未だに動こうとしていた013984号機の下半身部分を掴んで地面に叩きつける。
完全に破砕して、ようやく王利は一息ついた。
「しかし驚いた。俺の身体が貫かれるのは初めてだ」
「私も、勇者様にダメージが通ったのは初めて見た気がします」
二人して戦慄しながら周囲を見る。
丁度、ロクロムィスと化した首領により013983号機が粉砕され、ハルモネイアが013982号機を大破させたのは同時だった。
これで敵も全滅か。と思った次の瞬間、ありえない衝撃音と共に王利の前を緑色の物体が通過して行った。
思わず目を点にしてそれを目で追う。
マンティス・サンダーバードが物凄い速度で壁にめり込んで行った。
「ええい。マンティス、あいつに何をしたっ!?」
舌打ちしながらベルゼビュート・ハンマーシャークが素早く動く何かと戦っていた。
もはや強化された肉眼でも捕えきれない速度で動くのは、マンティス・サンダーバードと戦っていたはずの、動力部に損傷を受けた個体である。
量産型ハルモネイア013986号機。その壊れかけの機体が、ハルモネイア以上の速度を手に入れて、ベルゼビュート・ハンマーシャークを翻弄している。
013986号機の身体が何やら赤くなっている。
本当に一体何をしたマンティス・サンダーバード?
その姿、まさに通常の3倍は速いと言われたアレのようだ。
「……なんだアレは?」
戦いというよりは一方的な蹂躙を終えた首領が王利の近くにやってきて聞いて来た。
王利も訳が分からないので首を捻っておく。
「エルティア、あの蟷螂男を回復してやれ」
「あ、はい」
「W・B、アレを倒すぞ」
「……しか、ないですよね。行きます」
首領に促され、嫌々ながらも王利は013986号機に向けて走り寄る。
ついにインセクトワールドの手を煩わせることになり、ベルゼビュート・ハンマーシャークは思わず舌打ちした。
しかし、自分一人で手に負える相手ではない。
「すまん、ウチのバカが何かやったらしい」
「動きがまるで違うぞ。何したらこうなるんだ!?」
「ついさっきシザーズカッターを最大出力で放っていた。おそらく電撃を吸収したのだろう。あいつとは相性が悪すぎたらしい」
攻撃をすればするほどに相手が強くなっていく。
なるほど、マンティス・サンダーバードにとっては悪夢にも等しい相手だ。
他の面々が次々と量産型ハルモネイアを倒して行くのに彼だけはどんどん敵の方が強くなっていく。
焦って能力を使う程、敵が手に負えなくなっていくのだ。
最後に、極大の攻撃を仕掛けるも、それを吸収した敵に逆にのされたようだ。
「演算終了、現状の私の能力では、強化された量産型ハルモネイア013986号機との戦いで勝利する確率32%でありまる。ただ……」
言葉を止めてハルモネイアが王利たちに視線を向ける。
「我々が戦う必要性がない。と私は宣言しまる」
「ふむ? どういうことだ?」
「量産型ハルモネイア013986号機は自壊を始めていまる。数分後、高熱化しすぎた自身を保ち切れず、爆破しまる」
こともなげに伝えるハルモネイア。
敵が爆発。それはつまり……
「ハルモネイア、奴の自壊は半径何メートルまで及ぶ!? 急いで算出しろっ!」
珍しく焦った声で首領が叫ぶ。
「半径……1kmくらいまで爆風が届くと宣言しまる」
「W・B、即座に逃げるぞ。エルティアに最大級の結界を用意させろ! ヘスティッ、蟷螂男を連れて逃げろ。蠅男! それの相手は良いッ、貴様も逃げろ!」
「バカを言うなっ。こいつを放置しても爆心地が付いてくるだけだぞ!」
「ええいっ。その程度分かっておるわッ!」
首領の叫びにベルゼビュート・ハンマーシャークが急いで王利たちに合流する。
それを見た013986号機が彼らを標的に突撃を開始する。その刹那。
013986号機の足が溶けるように崩れ落ちた。
盛大な熱暴走による自爆が、今、始まろうとしていた。




