VS 量産型ハルモネイア2
ハルモネイアは全く無傷の013982号機に突撃した。
二つのレーザーソードが交錯する。
さすがは正式なハルモネイア。レーザーソードに加え左腕は銃口に換装して追撃を行っている。
剣を交えた瞬間狙撃された013982号機は、しかしダメージを気にせず剣に力を込める。
しかし、やはりハルモネイアには劣っているようだ。
すぐに引いたハルモネイアは左腕もレーザーソードに換装し、離れると同時に一撃。
013982号機の右腕を斬り裂きさらに右腕のレーザーソードで肩口までざっくりと薙ぎ飛ばす。
「損傷率40%を越えましる。損傷・中。敵性個体への勝利確率が1%に低下しましる。撤退すべきと宣言しまる」
「逃がさないと宣言しまる。王利に撫でてもらうため、あなたはここで破壊すると決まってまる」
双方言葉使いが少しおかしいので聞いてる王利はどっちがどっちの台詞か軽く混乱して来る想いだった。
そんなハルモネイアと量産型ハルモネイアの試合は、どうやら一方的になりだしたようで、量産型ハルモネイアの方が隙を見て逃げようと行動を変えていた。
一方、さらに凄惨な量産型ハルモネイアが一人。
013983号機である。
彼女は首領を相手に戦っていたのだが、もはやそれは戦いと呼べるものではなかった。
何せレーザーソードも土を焼くだけ、銃弾に至っては土に阻まれ全くダメージを与えないのである。
攻撃を封じられた013983号機はそれでも攻撃を続けていたが、ロクロムィスの外殻を持つ首領には敵うはずもなかった。
何せ首領は土塊の腕をただ振るえばいいだけなのだ。
それだけで013983号機は壊れて行く。
頭部が陥没し、目玉が飛び出、腕があらぬ方向へと曲がる。
もう、彼女はただ急速に動かなくなっていくのを待つだけの存在だ。
そして、最後の一人は量産型ハルモネイア013984号機。
腕を一本自ら引きちぎった個体である。
そんな013984号機に、今、二人の改造人間が戦いを挑もうとしていた。
否、ヘスティを護る護衛役を請け負っていたエルティアを含め、三対一である。
左腕を銃口に変えた013984号機は飛行しながら王利へと近づいてくる。
対する王利とヘスティは怪人状態へと変身しており、エルティアは彼らに隠れる位置で魔法の詠唱を行っている。
013984号機の先制。これは王利が銃弾全てをその身で受け止め蹴散らした。
銃が効果ないと知るや、すぐにレーザーソードに変化させた腕で斬り込んで来る013984号機。
接近と同時に剣を振る。その瞬間、エルティアの魔法が完成した。
「光の聖剣≪レイブレイド≫!」
王利の腕に光の剣が出現した。
レーザーソードと光の魔法剣が接触し、今まで聞いたことのないような音が響く。
あまりに不快な音に顔を顰める王利。
013984号機も少し眉根を寄せるが、彼女の表情の変化は未知の剣に対するモノの様だ。
その剣を測定出来ない。
構成物質は計測不可。
質量0。長さ測定不可。その剣は彼女の思考回路で有するどの装備にすら参照できる情報が無い。
完全に、存在しないはずの剣だった。
存在自体がエラーを引き起こす剣に、彼女は思考停止に陥りかける。
だが、一瞬早く、敵の攻撃が来た事でそちらの対処に意識を回した。
ヘスティが口からレーザーを打ち出したのだ。
王利の剣へと一度力を入れた013984号機はその反動で一気に飛び退きヘスティの一撃を回避する。
着地と同時に再び突撃。攻撃対象をヘスティへと替えレーザーソードを振り被る。
さすがに自分が攻撃対象に指定されるとヘスティも肝を冷やしたようで、慌てて下がる。
王利も急いでフォローに向うが、013984号機が接敵する方が速かった。
「反射の盾」
レーザーソードを振った瞬間、ヘスティの前に出現した反射の盾により、レーザーソードが折れ曲がる。
自身に向い放たれたレーザーソードに、013984号機は慌てて反応した。
頬に掠るが寸前で回避に成功する。
「理解不能の攻撃多数。未知の攻撃を纏めて新しいフォルダを作成しまる。新規フォルダ名を存在しえない未知の攻撃(仮)と命名しまる」
自身を思考停止にしないよう、適当な記憶スペースを作りだし、そこに魔法攻撃全てを詰め込んだようだ。
なかなか考えたものだが、残念ながらそれを有効活用する暇は彼女にはなかった。
回避成功して次の行動へ向おうとした彼女の背後から、光の剣が襲い掛かった。
気付いて013984号機が振り向いた時には、すでに袈裟掛けに斬り裂かれた後だった。
呆気に取られた表情で013984号機の上半身が滑り落ちる。
火花を散らし下半身が音を立てて倒れた。