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秘密結社の勇者様  作者: 龍華ぷろじぇくと
マザー → エクファリトスの王
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風の邪精霊

「おい……」


 思わず、首領は呟いていた。

 声を掛けられた王利は答えたくなかった。なので、聞こえなかったかのように身を真っ白な大地に埋めて行く。

 その世界は、一面、銀世界であった。


「ここは、どの辺りでしょうか?」


 エルティアも知らない場所に出現したらしく、雪深い世界に突如現れた王利たちは、落下と同時に雪の中へとダイブしてしまったのだ。

 さすがに受け身も取れなかった首領がかなり深くに埋もれたのでヘスティが慌てて超音波で探索、エルティアと王利とハルモネイアでなんとか救出したのである。


「時期が冬なだけとかじゃないのか?」


「私の国は大抵日本で言う春です。このような状態になることはありません」


「地域が違うデス。多分日本とロシアみたいな距離があるのデハ?」


 納得しながらも、王利たちはなんとか雪から這い出る。

 先程と同じようにクロスブリッドの二人と共に移動しようと思ったのだが、その二人が見当たらない。

 おかしい。と思った王利は、雪に埋もれた鎌を見つける。


 どうやら首領同様、受け身も取れずに埋もれたようだ。

 結局、ハルモネイアとエルティアに手伝って貰いマンティス・サンダーバードを救出。超音波で捜索すると、少し離れた場所にベルゼビュート・ハンマーシャークが埋まっていた。


 全員を救出してから彼らに飛行して貰い、とりあえず雪の途切れる場所まで向って貰う。

 どうやらかなり高い山の一つに転移して来たようで、山の上部に雪が掛かっていただけのようだ。

 そして、俺たちはある街を上空から通過する。


 ダークエルフの集落である。

 なるほど、少し離れてはいるがエルフの城とあまり離れてはないらしい。

 一度ダークエルフたちに会ってエルフたちの居場所を聞き、さらにロクロムィスと戦った場所を教えて貰う。


 王利の姿を見つけたダークエルフたちは英雄だ勇者だときらきらした瞳を向けて来たのが王利にはこそばゆかった。

 ベルゼビュート・ハンマーシャークとマンティス・サンダーバードが訳のわからないモノを見る様な目でその光景を見ていたが、質問などをしてくる事はなかった。


 そして、件の場所へとやってきた王利たちは、ヘスティの超音波で実に簡単にロクロムィスの死骸が埋まっている場所を探り当てる事に成功した。

 そこから後はエルティアの魔法で柔らかくした土の掘削作業である。


 まさに遺跡発掘とばかりに相当掘り進んだところで、ようやくロクロムィスの目に到達した。

 そこまでくれば、後は首領の働きである。

 全員に遊んでいろ。と自分が能力を使う状況を見せないようにした首領がロクロムィスの空洞となった目へと向かって行く。


 王利とエルティアはショッキングなシーンを見たくはないし見せる訳にはいかないと、興味津津のヘスティやハルモネイアの背中を押して遠ざけ、クロスブリッドの二人にも見られないように遠ざかって貰う。


 しばらく待っていると、大地を揺るがせ巨大な岩蛙が姿を現した。

 首領の姿は見えないが、ロクロムィスの目玉は巨大な芋虫の如く膨らんでいる。

 どうやら、亡骸さえあれば首領は自由に素体を変えられるらしい。


「では、奴を解放するぞ」


 首領の言葉と共に、ロクロムィスの口が開かれる。

 その瞬間、風が吹き出し、ロクロムィスの前方で風の邪精霊が姿を現した。


「おのれ貴様等ッ、我を謀り暗がりに閉じ込めおって! 許さんぞ!」


「黙れやられ役め。既に貴様等のよりどころである魔王は倒したぞ」


「何ッ!?」


 首領の言葉に驚くエスカンダリオ。

 そんな彼に、首領は蔑んだ言葉を吐きかける。

 既に貴様等の敗北は決まっているとか、役立たずとか、エスカンダリオのプライドをことごとく圧し折るような圧倒的な悪口を吐いたかと思えば、今度はエスカンダリオを褒め出した。


 魔王を倒すにはお前が一番危険だったから封印したとか、魔王より強いんじゃないかとか、折れたプライドをどんどん補修していく首領は、徐々に自分好みの反応を返してくるようエスカンダリオの思考を誘導し始める。


 初めこそ、魔王の代わりに自分が魔王となり魔族を率いて人間を滅ぼすと宣っていたエスカンダリオだったが、なぜかそこからインセクトワールドに入る入らないの問答になり、何を条件で協力するといった詰め込みに入って行き、彼が意図しないうちにインセクトワールド社員として登録させられていた。


 エスカンダリオが気付いた頃には首領の下で働くことを自分から了承した後だった。

 そこで自分が何を言ったか気付いてアレ? おかしいぞ。となったのだが、既に契約は済んでいた。

 まさに悪徳業者。詐欺の常習犯。気付いた時には後の祭りである。

 こうして、エスカンダリオが本人の納得いかないままに首領の策略で仲間に加わった。

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