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秘密結社の勇者様  作者: 龍華ぷろじぇくと
マザー → エクファリトスの王
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エクファリトスの王

「緊急事態でる」


 目を閉じ、更新確認を行っていたハルモネイアが突然目を開いて告げた。

 その表情は能面のままで、焦った様子は見られない。

 機械だからだろう。淡々と事実を述べる。


「マザーがエクファリトスの王に破壊されましる」


「……は?」


 予想外の言葉に、王利たちは思わず大口開けて意識を飛ばしていた。


「えくふぁりなんとかって……アレですか? 聖女伝説とかいうのにでてきた……」


「黒い身体どうこうデス……王利サンかと思っていたのデスが?」


「エクファリトスの王から感情を得る代わりに機械族への命令権を移譲したようでる。エクファリトスの王はすぐにマザーより自分の命令を優先するよう命令し、ソレが共通認識部に流れておりまる。更新していれば私も従属することになっておりましる」


 どうやら、ドクター花菱の言葉通り、更新を行わなくてよかったようだ。


「エクファリトスの王による二度目の命令でマザーが機械族に破壊されましる。これ以降の更新は行うべきではないと判断しまる」


「当然ですっ! そいつが誰かはわかりませんが、そんな訳のわからない王に傅く必要などありません! 皆さん、エクファリトスの王、倒しちゃいましょう!」


「それはいいが蜻蛉女よ。そのえくふぁりなんとかとは……なんだ?」


 王利やヘスティは知っていたが、聖女伝説を首領たちは見ていなかったようだ。

 資料を読みこんでいるほたるんも今はメンテナンス中。

 どんな内容だったかなと王利は頭の中に残っている資料を思い出す。


「確か、第四世界より来たえくふぁりの王が意志なき者を蹂躙して母なる意志が自分の過ちに気付き涙するだったかな? 無力な民はその全てを王に捧げて忠誠を誓う……って内容だったと思う」


「はい。その後は、ノクターヌの魔女が死に瀕したサルトレアの魔王を蘇すのです」


 蘇す。と聞いた首領がドアに視線を向ける。


「確か、ほたるんが負傷しておったよな? メンテナンスを行うというのも、ある意味蘇すといわんか?」


「え? じゃあほたるんが魔王になるんですか!?」


 エルティアの驚きにバグレンジャーの面々が興味深そうに頷く。


「なるほど、すると今回は俺たちは魔王側の人間ということか」


 バグカブトの言葉に葉奈が困った顔をした。


「ちょっと、前回あたし達勇者とそのパートナーだったんだけど」


「ふっふっふ。所変われば正義も悪役ですよ。でも、今回は敵が全国民ですが悪いのは向こうですからね。問題ありません。予言通り、滅ぼしてやりますよ」


 王利も真由も、半ば確信していた。

 黒き身体のエクファリトスの王。そいつの正体を。

 なぜならば、王利がこの世界に連れて来てしまった改造人間なのだから。


「どうやら、決着を付ける必要があるようですねクロスブリッドカンパニー」


「え? もしかして、エクファリトスの王って……」


「おそらくコックル・ホッパーだよヘスティ」


 ヘスティは王利に言われた人物を思い浮かべてなるほどと納得した。

 確かに黒い。そして脅威の跳躍。

 けれど、なぜ彼が王に成れたのか、マザーの元へ迎えたのかは分からない。

 ただ一つ確かな事は、この世界で、敵は全ての機械を統べる者になったという事だった。


「全面戦争になればこちらの負けは確実だな。敵の首魁に辿り着く前に機械共にやられかねん」


「ふむ。とりあえず戦力になりそうなのはこの元人間ファームにして新生インセクトワールドの社員だけなのだな」


「だから、新生インセクトワールドじゃないってば。全く、あんたは本当に懲りないわね」


「ふん。このくらいのブラックジョークくらい軽く受け流せる度量が無ければW・Bの女になどなれはせんぞ毒蝶女」


「なっ!? か、関係ないでしょ!? そんな度量……か、関係ないよね王利君!?」


「えうっ!?」


 まさか振られるとは思っていなかった王利は突然自分に向いた話に対応できず呻く。

 それを葉奈はブラックジョークを受け流せる度量は欲しいけど頷けないというニュアンスに取ってしまった。


「度量。あたしに足りないのは度量なのね……」


 人知れず膝から崩れて絶望している葉奈。いくらなんでも戸惑い過ぎである。

 これも葉奈に組み込まれてる隷属システムのせいなのだろうが、相変わらず王利中心思考の葉奈らしい悩みだった。

 相手するのもバカらしいので、皆放置して情報の共有を行う。


 王利たちが先程までの自分たちの動きを伝えると、今度はバグアントより首領の暴走が伝えられ、首領が面白く無さそうな顔になる。

 首領の暴走が終わった後はこの部屋で王利たちの帰還を待っていたようだ。

 その間バグレンジャーの誰かが常に首領を監視していたのは、放置しておくと何するか分からなかったからだろう。


 信用ないからな首領。と思う王利だが、その横に居るエルティアが首領を見る目に気付き、怪訝な顔になった。

 エルティアの視線が、まるで危険人物を見る様な眼になっていた。

 首領に対し疑念を抱き始めている証拠だった。


 今、エルティアに愛想尽かされると首領の野望だけでなく生活面でもかなりの問題になる。

 エルティアについてはフォローしておかざるをえないだろう。

 王利は人知れずため息を吐く。

 問題は山積みだ。

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