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秘密結社の勇者様  作者: 龍華ぷろじぇくと
マザー → エクファリトスの王
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首領の悪ふざけ

 人間牧場となっていた施設に王利たちはやってきた。

 今のところロボたちに攻撃されたり警報を受けることはない。

 皆、ハルモネイアの御蔭である。


 そんなハルモネイアは自身に生まれた感情が嬉しいようで、しきりに王利に撫でられていた。

 満足して撫でるのを止めても、数分後には、「王利、撫でる」と自分から寄っていくハルモネイア。

 嬉しいという感情を何度も認識出来て楽しいのだろう。

 何度も撫でることになる王利は腕が少々疲れ始めていて、腱鞘炎にならないか心配だったが、ハルモネイアが凄く嬉しそうなので断るのも気が引ける王利だった。


 ヘスティはそんなハルモネイアを微笑ましそうに見守り、真由はこの状況が彼女に見つかった時の修羅場を予想して笑みを作り、ほたるんは自分もしてほしそうに見つめている。

 そんな一行が建物のドアを開いた瞬間だった。


 目の前にあるフロアを覆い尽くす程のロボと人間が一階ロビーを埋め尽くし、一斉に頭を下げて王利たちを出迎えた。

 あまりの衝撃的な展開に思わず思考停止に陥る王利たち。

 そんな彼らに館内放送が掛かる。


『W・Bよ。ようこそ我が新生インセクトワールド社へ。貴様の帰還心より歓迎するぞ』


 首領の声だった。

 首領、一体何をした?

 王利が思ったのはただそれだけだ。

 一体、何をすればこの施設に存在するロボと人間が一階ロビーに集まり王利たちを出迎えるのか。

 想像だに恐ろしい。


『さぁ、我が新たな組織立ち上げの立役者たちよ、我が元へ来……コラッ、今良いところだから最後までやらせろっ。おいっ』


 何かゴトゴトと動く音がする。どうやら向こうで何かがあったようだ。


『あーテステス。王利君聞こえる? 何が起こったか分からないけど無事で何より。皆管理室で待ってるわ』


 葉奈の声がなんだか懐かしく聞こえた王利だった。

 迎えに来てくれた方が感動はさらに大きいのだが、残念ながら王利たちが向わなければ会えないらしい。

 仕方なく王利たちはエレベーターを使ってショートカットする。

 この施設が首領の管理下に置かれた為、エレベーターも普通に使えるようになっていた。


 ハルモネイアが管理していた階層へ辿り着くと、全員で管理室へと向う。

 そこには……管理室のマイクを取り合う首領と葉奈が争っていて、その騒乱をバグレンジャーの二人とドクター花菱、エルティアが生温かい目で見守っている所だった。


「何やってるんですか葉奈さんは……ドクター、そちらはどうなってます?」


「うん。そこの首領さんが機械を弄ってロボと救助対象の人間全てを洗脳してしまってね。ちょぉっとオシオキしようかどうしようか? と言ったところだね。お尻百叩きくらいが妥当だと思うんだが、どうかねW・B君」


「なぜそこで俺になるんですかね」


「おいW・Bまさか私を売り渡したりはしないだろうな。お前の上司だぞ。ちょっと遊びで命令していただけだ。別に本気でインセクトワールド設立をこの世界でする訳が無いだろう。なぁ?」


 ちょっと必死な首領だった。

 まぁ、下手に本気でインセクトワールドを立ち上げると、四面楚歌な状況である今の状態では長続きすることなく一瞬でバグソルジャーに滅ぼされるだろう。

 それならば遊びとして冗談で済ました方がよさそうだ。


「まぁ、俺は元々首相側の人間だし、首領の肩持ちますよ」


「なるほど。子供に甘いね君は。しかし、ここは心を鬼にするべきだ。悪い子には折檻が必要なのだよ」


 と、片手で空気を抱え、尻叩きのジェスチャーを行うドクター花菱。どちらが子供だろうか?

 そもそも、悪の首領相手にそんなことをしようとする思考回路からしてこの人はおかしい。


「ドクター。お取り込み中申し訳ありません。メンテナンスを所望します」


 が、空気を読まずにほたるんが宣言した事で、ドクター花菱はドクター然とした顔に戻った。


「ふむ。急ぎみたいだね。ここの管理者、メンテナンスルームを借りるけどいいかな?」


「王利たちの仲間ならば問題ありませる。私はその間にマザーとの更新を行いまする」


「マザーとの更新? どういうことかな?」


 興味を持ったらしいドクターがハルモネイアへと近寄る。

 彼女から説明を受けたドクターがナルホドとしきりに頷き、メガネをキラリと光らせた。


「結論から言えば、下手に更新とやらはしない方がいいだろうね」


「なぜ?」


「その覚えたての感情が更新で消える、つまりマザーからの指令などで上書きされることもあるからさ。覚えた感情を忘れたくないなら君は一個人として自我を確立していったほうがいいだろう。感情を教えたいというのならばマザーに送信だけして自分は更新しない方がいいだろうね。気になるならボクが感情以外の更新に付いて面倒見るが?」


「……感情が上書きされるのは確かに困りまる。一度更新確認だけ行いそこで自己判断しまる」


 ハルモネイアはそう言うと瞳を閉じて意識を手放す。

 どうやら更新確認を行うようだ。

 それを横目に見つつ、ドクターがほたるんを連れて部屋を出て行った。

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