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秘密結社の勇者様  作者: 龍華ぷろじぇくと
ハルモネイア → 感情の芽生え?
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心の目覚め4

「なんとか、撒けましたね」


 町から逃げ出した王利たちは物影に隠れて待っていた。

 そのすぐ上を、三体の怪人が飛び去っていく。

 見つからなかったのを確認し、バグリベルレが安堵の息を吐きだした。


「マザーとの接続確認しました。情報のやり取りを開始しようかと思いまる。更新中はしばらく動けなくなりまる。構いませる?」


 異世界に戻って来た事でハルモネイアがマザーとの更新を行えるようになったらしい。

 ただ、更新中は身動きが出来なくなるそうなので、王利たちに確認するように聞いて来た。


「あー、ちょいと待ってくれるか? できれば他の仲間と合流してからにしてほしいんだ」


 王利としては自分たちの戦力が減るのは遠慮したかったので、今は止めておくように告げる。

 もし、この時マザーと更新、あるいは交信できていれば、コックル・ホッパーによる世界乗っ取りを未然に防げたかもしれない。

 しかし、それはもしもの話。

 結局、ハルモネイアは王利の言を優先していた。


「自動更新は切っておきませる。空き時間ができたなら更新可能だと宣言してくださる」


「わかった。落ち着いたら更新するように伝えるよ」


 王利の言葉に頷き、ハルモネイアは自身の現在位置を捜索する。

 脳内に現れた世界地図から宇宙空間に放たれた衛星を介し現在地を特定。さらに自身が異世界に向う直前までいた場所への最短ルートをダウンロードする。


「よし、バグレンジャーの元へ向おうか」


「そうですね。さっさと葉奈さんたちに合流してクロスブリッドカンパニーをやっつけちゃいましょう」


 バグリベルレの言葉にヘスティが自分を差して私もクロスブリッドカンパニーなんですけど。みたいな半泣きになっていたが、王利以外は誰も気付いていなかった。

 気付いた王利も何かを言う事はなく、放置することにした。

 結局、後に残されたヘスティが誰にもツッコミを入れられず、肩を落として王利たちの後を付いていくのだった。




 街中を歩く王利たちだったが、意外な事に住人たちに見られても警戒すらされなかった。

 何故かと言えば、ハルモネイアのせいであると言っていいだろう。

 正式にマザー側の人間ファーム管理専用機械族なので、仲間認識されているせいだ。

 その仲間にして上位個体が一緒に居るのならば、人間や未知の生物であれ問題はない。という認識なのだそうだ。


 ハルモネイアにこの町、モービルタウンについて説明して貰いながら王利たちは観光気分で歩いていた。

 真由などは変身を解いてヘスティ共々ウインドウショッピングを行っていたする。

 と言っても、ショーウインドウに見えるのは流行の服などではない。

 例えば、犬用機体のカラーバリエーションが数体飾られており、あなたの身体、替えませんか? などとうたい文句が値札の横に書かれている。


 あるいは人型ボディの胸板厚いバージョン、やせ形タイプ。胸が大きなタイプ、子供用タイプなどなど、さまざまな機械族用のボディパーツが売られている。

 しかし、これは形だけらしい。

 物欲の無い機械族たちは自分のパーツがどんなものであれ替える気はないらしく、繁盛というよりも人っ子一人見当たらない。

 完全に閑古鳥が鳴いていた。


「王利、お願いがありまる」


「俺に?」


 何度聞いてもハルモネイアの口調のおかしさが際立って聞こえる王利だったが、できるだけ気にしたそぶりを見せないようにハルモネイアに問い返す。

 すると、ハルモネイアは自身の頭を指さした。


「もう一度、頭を撫でる行為を所望しまる。ほたるんのいっていた嬉しいという感情を手に入れまる」


 珍しいことにハルモネイアが一度行ったことをもう一度してくれと言ってきた。

 おそらく、コックル・ホッパーによる襲撃さえなければ向こうの世界で告げていたのだろう。

 多少ゆったりできる今だからこそ、何かを試しておきたいという目で告げて来た。


「まぁ、撫でるくらいはいいけど……」


 言いながら、ハルモネイアの頭を撫でてやる。

 少し撫でてから一度手を止め、もういいか? と聞いてみる。


「まだ。もう少しで何かが分かる気がしまる」


 言われるままに撫でてやる。

 心持ち、ハルモネイアの表情に和みが見られ始めた気がした。

 しばらく、その行為を続けていると、王利たちに気付いた真由とヘスティがウインドウショッピングを止めて戻って来た。

 王利の横に立って羨ましそうに見つめていたほたるんの横にやって来て、二人して何かニヤニヤとしている。


 なんだか気恥しくなってきた王利。

 思わず手が緩やかに遅くなり、そして止まった。

 すると、ハルモネイアから不満そうな「あっ」という声が漏れた。


「おやおやぁ。ハルモネイアさんはもっと撫でて欲しそうですよヘスティさん」


「ええ。とても嬉しそうでシタ。もっと撫でてくれないのかと不満そうにしてイマス、真由サン」


「私が、嬉しそう? 不満そう?」


「それ、もう感情と言っていいんじゃないか?」


「……これが、感情?」


 王利の言葉にハルモネイアは眼を閉じる。


「王利、もう一度だけ、お願いしまる。感情、確認したい」


「ああ、これくらいなら何度でも」


 王利はハルモネイアの頭を優しく撫でる。


「これが……嬉しい。分かる……気がしまる。この感覚が感情。これは、前にも何度か感じたことがありまる。そう……その時から、私には感情が……」


 感情が高ぶったらしい。

 ハルモネイアの眼から一筋の涙が流れる。

 それは、人とは違い、アイレンズの潤滑油ではあったが、彼らにとっては些細な違いだった。

 確かな事はただ一つ。

 ハルモネイアという機械族がこの日、ついに感情を手に入れたのだった。

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