心の目覚め2
「はぁッ!」
バグリベルレの鋭い蹴りを、持ち前の動きで紙一重で避けるコックル・ホッパー。
動くたびにカサカサと聞こえてくるのは王利たちにとっては嫌悪感以外の何物でもない。
コックル・ホッパーの動きによる音が鳥肌が立つ程の悪寒を王利たちに運んでいた。
これは、コックル・ホッパー特有の能力でもある。
嫌悪感と焦燥感を相手に植え付けることにより、相手の攻撃精度を低下させる能力なのだ。
しかし、逆に攻撃力が増して行くというデメリットもあるのだが、ムキになればなるほどに相手の攻撃は避けやすくなるのでコックル・ホッパーはデメリットとは捉えていない。
さらに、隙を見つけて蝗を思わせるジャンプキック。
バグリベルレは慌てて避けるが、着地と同時に素早く回り込んで来るコックル・ホッパーに苦戦気味である。
同じ速度に特化した改造人間ではあるが、何億年という昔から完成された姿で存在し続けるゴキブリという存在を持つコックル・ホッパーの能力に、バグリベルレは付いて行けていないようだ。
これがもし空中での戦いであれば、空のハンターであるトンボが負けることはないだろうが、地上ではコックル・ホッパーに軍配が上がる。
さらに一瞬でも隙を見せると突然飛びかかってくるコックル・ホッパー。
カサカサという音も彼女にとっては不利に働いていた。
いちいち耳触りなのでイライラとしてくるのだ。
容姿も殆どがゴキブリを連想させるコックル・ホッパーには、思わず便所スリッパを叩きつけたい衝動に駆られてしまう。
精密さを欠いた攻撃は避けるに容易く、だんだんとコックル・ホッパーの優位が表面化し始めて行く。
さすがにこのままではバグリベルレが負けてしまう。
王利は覚悟を決めた。
そもそもここであれば変身した所で見られるのは見知った仲間だけだ。
正体がバレて追われることもない。
「flexi……」
「見つけたぞ、ヘスティ=ビルギリッテ!」
変身しようとした矢先だった。
まさかの敵の援軍。
ベルゼビュート・ハンマーシャーク、マンティス・サンダーバード、ミカヅキ・メイフライの三体が空を飛んで来たのだ。
各々自分の翅を使い王利たちの元へと降り立つ。
その姿はボロボロではあったが、全員五体満足だった。
それを見たバグリベルレが絶望にも似た叫びを上げる。
「あああ、スワンさんのドジ、間抜けっ! なにが殿任せろですかっ! 役立たずぅっ!!」
叫びながらもコックル・ホッパーに拳を突き入れるが、コックル・ホッパーは身体を逸らして背面で拳を滑らせた。
アブラギッシュという言葉が思い浮かぶ。
バグリベルレは自身の全てがゾワリと総毛立つ感覚を味わった。
思わず「うひぃっ」と悲鳴を上げる。
次の瞬間、コックル・ホッパーの蹴りを喰らって塀に激突していた。
絶体絶命、援軍も無し。
このまま変身した所で王利たちに勝ちは見えない。
ならば……
「真由さん、こっちに!」
王利の声に瓦礫から立ち上がったバグリベルレが慌てて王利に向って飛翔。
「しまった、あいつらまだ生きて……」
王利は即座にダイアルを回していた。
それに気付きクロスブリッドカンパニーの怪人たちが彼に殺到する。
そんな時だった。仮面ダンサースワンを始めとしたジャスティスレンジャーが現場に到着したのは。
そこで見つけた敵の生存者に驚くスワンの前で、彼ら全てが光に包まれる。
眩しさに目を細めた彼女が次に見たのは、そこに居た全員が消え去り、静寂を取り戻した町並みだった。
まさかの光景にスワンもジャスティスレンジャーの面々も呆気に取られ、しばらく呆然としていた。
いち早く我を取り戻したのはジャスティスセイバー。
その光に見覚えがあったせいだ。
そして彼は一人確信する。彼ら全員が『異世界』に旅立った事を。
「どうやら、あいつらを追う事は無理そうだな」
「あら、どうなったかわかるの?」
「ああ。あの光、俺のクラスメイトの一人が使っていた能力に似ていたんです。だから、俺らには手出しできない場所に向ったとみていいでしょう」
「そう。なら仕方ないわね。放置してたパステルクラッシャーだっけ? アレの戦闘員片しに戻りましょうか。一応ライドレンジャーの面々に応援入れといたけど来てるかわからないし」
ジャスティスセイバーの言葉に薄い反応を返し、スワンは踵を返す。
「全く、私に助っ人頼んどいてトドメに参加させないなんて……後でオ・シ・オ・キね」
この場にバグリベルレがいたならば、青い顔で土下座を披露するだろう冷徹な声で呟くスワンに、人知れない恐怖を抱くジャスティスレンジャーの面々だった。
そして駅へと向ったジャスティスセイバーは、パステルクラッシャーを撃退し、スワンからの教えを請うという地獄の特訓へ足を踏み入れるのだった。
以上、友情出演のジャスティスレンジャーでした。
ちょっと長く出し過ぎた。




