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秘密結社の勇者様  作者: 龍華ぷろじぇくと
ハルモネイア → 感情の芽生え?
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心の目覚め1

 王利たちはひたすらに走っていた。

 繁華街を抜け、にぎわう交差点を避けて路地裏へ。

 パンク頭のお兄さんがう○こ座りしている真上を飛び越え、野良猫の尻尾を踏みつけ、人気のない道をただ無心に逃走する。


 駅からはだいぶ距離を離したと思う。

 住宅地の十字路に差しかかったところで一度停止して周囲を探る。

 どうやら追ってくる気配はないようだ。


 王利は一息ついて仲間の状況を確認する。

 まずはヘスティ。

 自分が手を繋いでることに今さらながら気付いて慌てて手を離す。


 ヘスティも今まで気付いていなかったようで、王利と手を繋いでいたと気付いた瞬間、顔を真っ赤にして同時に離していた。

 そんな二人を見てバグリベルレがほたるんを担いでいたハルモネイアに耳打ちする。


 ハルモネイアがこくこくと頷いているのを見るに、また良からぬことを吹き込んでいるらしい。

 王利はそれに気付いてバグリベルレを睨むが、バグリベルレは王利の視線から逃れるように明後日の方向を向いていた。


「と、ところで、この後どうしマス?」


「あ、そうだな。こんな状態だとこの世界でゆっくりする訳にもいかないか。ハルモネイアとの交渉は出来た訳だし、一度向こうに戻ってバグレンジャーと合流しよう。そうすればコックル・ホッパーたちにも対抗できるはずだし」


「王利さんも気軽に変身できますしね」


「俺は硬いだけだぞ。敵の攻撃受けるのはいいけど相手を倒すには力不足だ」


「その辺はヘスティさんと私、ほたるんやハルモネイアがいますよ。ねぇハルモネイアさん」


 突然話を振られたハルモネイアはこてんと首を横にする。

 意味を理解できなかったようだ。

 彼女にとっては感情が理解できればそれでいいので、わざわざ俺たちを助ける必要はないのだ。

 そもそもが助けたいなどの感情すら理解していないのだから当然のように戦闘に参加するようなことを確認されても困るのだろう。


「で、ハルモネイア、感情についてはどうだ? 少しくらいわかったか?」


「感情がどういったものかは教えて貰いましるが、ドキドキする、ふわっとする、紅い実弾けると言われましてもその状況を理解できませる。また尽くしたいという感情については、機械族である我々には主人に尽くす事は当然と思われ、これも認識には至りませる。結果、私にはまだ感情を理解する事は出来ていないと思われまする」


「ま、仕方ないよな。先生が真由じゃ」


「ちょ、それどういう意味ですか王利さん!?」


 バグリベルレの抗議を無視して王利はハルモネイアに歩み寄り、彼女の頭に手を乗せる。


「まぁ、急ぐもんじゃないし、ゆっくり認識すればいいさ」


 と、頭を撫でてやった。

 すると、ハルモネイアに背負われていたほたるんが羨ましそうにハルモネイアを見る。

 彼女もやってほしいのか? と王利はハルモネイアから手を離し、ほたるんの頭を撫でてみた。


「これは……まるでマスターに褒められているようで嬉しいです」


「嬉しい……?」


 ほたるんの言葉にハルモネイアは自分の頭に視線を向ける。

 何やら考え込み始めた所だった。


「マスター散開をっ!」


 突然ほたるんがハルモネイアから飛び降り、王利にタックルをかまして来た。

 油断していた王利がおふぅっと呻くが、ほたるんはそのまま王利を抱え上げて飛び退る。

 さらにバグリベルレがヘスティを捕まえ飛び上がるのと、漆黒の影が上空から突撃して来るのは同時だった。


 一人取り残されたハルモネイアが振り向いた時には、影の足が彼女に直撃する寸前だった。

 襲撃者の一撃にハルモネイアが地面を滑走する。

 機械で出来た足が火花を散らしアスファルトを割り砕いていく。

 数メートル後方に下がり、ようやくハルモネイアが止まった。


 その腹部には襲撃者の足が深々とめり込んで……いなかった。

 寸前で両手で受け止めたハルモネイアは、襲撃者、コックル・ホッパーの一撃に耐えきっていた。

 不意の一撃に反応して見せたハルモネイアに、コックル・ホッパーが舌打ちして飛び退る。

 くるりと一回転して地面に着地すると、深く息を吐きだした。


「コックル・ホッパー……なぜあなたがここに? まさかスワンさんを倒したのですか!?」


 驚きに彩られたバグリベルレの声に、コックル・ホッパーは不敵に微笑む。


「ふん。そんな奴より己の心配をしたらどうだ蜻蛉女? 現に俺はここに居るのだぞ」


「……それもそうですね。ですが、一対一なら負けませんよ」


 睨み合う二人から王利たちは距離を取る。

 巻き添えにならないようにすることもあったが、他の敵が来ないとも限らないので警戒する事にしたのだ。

 同じ理由で、ハルモネイアとほたるんは王利たちから離れない。


 ついでに言えば、ほたるんは予想以上に内部ダメージを蓄積させていた。

 今も、誰にも伝えていないがアラートが鳴り響いている。

 走ったり逃げたりする分にはまだ問題無いが、ミカヅキ・メイフライとの戦闘で、戦いのできる身体ではなくなっていたのである。


 早急に、博士に見て貰う必要があった。

 だが、その博士は異世界にいる。

 実質、ハルモネイアは三人のお荷物を抱えて他の敵の襲撃に備えなければならない状況になっていた。

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