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秘密結社の勇者様  作者: 龍華ぷろじぇくと
ハルモネイア → 感情の芽生え?
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舞踏会閉幕

 ベルゼビュート・ハンマーシャークとミカヅキ・メイフライは打つ手のない状況に焦っていた。

 たかが正義の味方一人に手も足も出ないという状況は初めてだったのだ。

 一対一なら分かる。苦戦する事もあるだろう。


 しかし、二対一、いや四対一でさえ勝てない存在がいるなど想像すら付かなかった。

 現に、目の前で華麗に踊る化け物を見ても、未だに幻想を見せられているのではとすら思えてしまう。

 二種類の生物を持つ自分たち改造人間は単純な膂力でいえば相手を完全に上回っていなければおかしいのだ。いくら相手も改造人間だと言っても、か弱い女性の姿をしており、変身すらしていないはずの敵である。


 ただし、彼らは気付いていない。

 仮面ダンサーの変身こそが、ダンス衣装を身に纏った今の姿だという事を。

 彼女たちは今の姿こそが変身後の姿なのである。


 だから、単純に仮面ダンサーが化け物なのではなく、技術の差であった。

 仮面ダンサースワンの力自体はおそらく、ベルゼビュート・ハンマーシャークにもミカヅキ・メイフライにも敵わない。


 けれど今まで培われた技術と索敵能力、そして一番の武器は、その特化した情報処理能力であった。

 視覚情報を隅々まで拾い確実な索敵を可能にした彼女たち仮面ダンサーは空気の揺らぎすらも情報として拾い上げる。


 いくらミカヅキ・メイフライが自身を隠蔽しようとも、自身が動くことにより起こってしまう空気の動きまでは隠せない。

 だから、居場所がバレている。


 さらに情報処理能力の特化により、彼女の体感時間は常人のそれとは比べ物にならない。

 スワンにはこの能力のおかげで敵の攻撃はほぼスローモーションに見えている。

 後はそれに対処するだけなのだ。

 自分の思考に身体がリンクするようになればこの動きは簡単に編み出せる。

 そして、改造人間と化したスワンには、高位情報能力を持つ脳に対応できる身体が存在するのである。


 結果、どれほどベルゼビュート・ハンマーシャークやミカヅキ・メイフライが奇策を用いて攻撃しようともスワンにとっては只の遅い攻撃にしか見えていなかった。

 後出しジャンケンのようなモノである。

 ただ相手の攻撃を直前まで見つめて反撃すればいいのだ。簡単過ぎる殿しんがりであった。


 だが、さすがにベルゼビュート・ハンマーシャークもミカヅキ・メイフライもこのまま負ける気は毛頭ない。

 反撃で吹き飛ばされたミカヅキ・メイフライが吹き飛ぶ瞬間身体を透明化させる。

 どこかにぶつかったようだが、それきり空気の揺らめきが消えた。


 怪訝な声を洩らすスワン。その隙を見付けたベルゼビュート・ハンマーシャークが突撃を開始する。

 シュモクザメとしての特性を十分に引き出した体当たり。

 しかしスワンは伸身宙返りでやり過ごすと、通りすぎたベルゼビュート・ハンマーシャークの背後に降り立つ。


 その瞬間、待っていたとばかりにベルゼビュート・ハンマーシャークが尻尾を叩き付ける。

 丁度降り立つ直前を狙った攻撃に、さすがのスワンも反応しきれなかった。

 それでも軸をずらし勢いの幾らかを殺した攻撃を受け、体勢を崩すスワン。


 倒れる瞬間を狙い、ベルゼビュート・ハンマーシャークが蹴りを叩き込む。

 が、スワンは片手を地面に付けるとその腕を支柱に倒立。

 ベルゼビュート・ハンマーシャークの蹴りを華麗に躱し、両手で身体を回転させつつ回転蹴りを放ってきた。


 逃げようとしたベルゼビュート・ハンマーシャークに、スワンのパレオが重力によって垂れさがり、魅惑の三角地帯が露わになる。


「見え……たぁわばっ!?」


 思わず気を取られたベルゼビュート・ハンマーシャークは、スワンの蹴りを顔面に直撃されていた。

 ぶべら。と無様な声を残してベルゼビュート・ハンマーシャークが錐揉み回転して吹き飛ばされる。

 失敗したと悟った時には、後頭部が地面に突っ込んだ時だった。

 そして、彼の意識はそこで途絶える。


「ふう。なんとかやれたわね」


「やれたというか……すげぇっすね」


 終わった事を確認したジャスティスセイバーがゆっくりとスワンに近づいていく。

 その頃には、倒れていた仲間たちも起き上がり始めていた。


「ジャスティスレンジャー、あなた達も良く頑張ったわ。新進気鋭にしては持った方だと思うわよ」


「いえ、アレを見せられたら俺らはまだまだだって良く分かるっす。あの、良ければ俺らに稽古つけてもらえないですか? 俺も、あんたみたいに強くなりたいんだ。正義を、皆を守れるように!」


「そうね……あまり一所に長居はしない主義なんだけど……っと、その前に、逃げたあのG人間追うわよ。強くなりたいなら付いてきなさい」


 スワンは踵を返してコックル・ホッパーを追って走り出す。

 ジャスティスセイバーも仲間の無事を確認した後ですぐに後を追って走り出した。

 ジャスティスレンジャーの面々も歩きながらその後を追って行く。


 そして、誰も居なくなったその場所に、ゆっくりと姿を表すミカヅキ・メイフライ。

 彼は自身を透明化して、その場から動かないことで索敵を回避したのである。

 苦肉の策だった。

 もしもスワンが彼の消えた場所に歩み寄り蹴りでも行っていれば、彼の擬態はすぐに見破られ殺されていただろう。

 それでも、最後の一撃でかなりの重傷を負っている。


 時を同じくして、マンティス・サンダーバードが噴水から立ち上がった。

 失った腕も生え、エリマキ・ガンナーの能力を身に付けた彼は、よろよろとミカヅキ・メイフライの元へとやってくる。


 そして、意識を失っていたベルゼビュート・ハンマーシャークもぎりぎり生き残っていた。

 意識を取り戻した彼は二人の元へ向うと、無言で頷き合う。

 三人は互いの身体を支え合いながら、正義の味方達とは逆方向に去って行った。

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