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秘密結社の勇者様  作者: 龍華ぷろじぇくと
ハルモネイア → 感情の芽生え?
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ジャスティスレンジャー VS クロスブリッドカンパニー3

 エリマキ・ガンナーはエリマキ蜥蜴とテッポウウオのクロスブリッドである。

 エリマキトカゲは走りに特化した生物である。

 ただ、走り方が独特なので笑いを誘ってしまうのだが、その走りは水に沈むことなく渡り切る。


 さらに、テッポウウオは水中でこそ威力を発揮する生物である。

 口に含んだ水を使い、空を飛行する虫を鉄砲のように発射した水で撃ち落とす生物だ。

 その命中率と威力は素人の扱う銃とは比べるべくもなく、歴戦のプロも顔負けの実力である。


 つまり、ジャスティスガンナーといえども苦戦する相手であることは確かだった。

 さらにいえば、エリマキ・ガンナーは噴水付近に陣取り、水を補給しながらジャスティスガンナーの攻撃に対応している。


 銃弾無制限同士の戦いは、横槍が入るだけでそちらに敗北が傾いてくる。

 少し前まではジャスティスガンナーの敗北が濃厚であったが、ほたるんの手助けにより、ミカヅキ・メイフライからの横槍が入らなくなったため、なんとか体勢を立て直していた。


 こうなると、彼らの決着はなかなかつかない。

 むしろミカヅキ・メイフライとほたるんとの戦いの結果が、彼らの勝敗を得ると言えた。

 そんな二人の戦いは……


 うっすらと空気に溶けて消えて行くミカヅキ・メイフライに、ほたるんは赤外線探知に視界を切り変え動きを把握する。

 しかし、ミカヅキ・メイフライは赤外線にすら映らない。


 戸惑いながらも視界をサーモグラフィに切り替える。

 しかし、熱感知にも反応はなかった。

 完全に姿を見失ったほたるんに、突如、衝撃が襲う。


 側面からの一撃を無防備に浴び、訳も分からず吹き飛んだ。

 しかし、空中で姿勢を整え勢いを殺して着地。

 視界をγ線に切り替えると、ようやくミカヅキ・メイフライの足跡が見えた。


「敵感知……そこッ!」


 髪を一本引き抜きミカヅキ・メイフライ目掛け投擲する。

 しかし、粘着質の髪の毛は、ミカヅキ・メイフライを捉えられない。


「甘いな!」


 しかも、見当違いの場所からミカヅキ・メイフライの声が聞こえた。

 慌ててそちらを向いたほたるんの腹に、ミカヅキ・メイフライの拳が突き刺さる。


「!?」


 認識したはずの場所に居なかったことに驚くほたるん。

 なんとか足を振り上げ反撃を試みるが、ミカヅキ・メイフライが退くのが一瞬早かった。

 失敗のことはメモリーデータに記憶して、ほたるんはX線モードに切り替える。

 そこで、ようやくミカヅキ・メイフライの秘密がわかった。


 蜉蝣とは陽炎。揺らめきにより相手を惑わすことが能力であった。

 あらゆる光線に適時変化させ、相手に幻を見せて行く。

 つまり、ほたるんが認識していたものは全て幻だったのである。


 しかし、気付くのが少し遅かった。

 ミカヅキ・メイフライの一撃に視界がぶれる。

 側頭部に蹴りを入れられ、ほたるんが吹き飛んだ。


 その先に、丁度エリマキ・ガンナーの攻撃を避けたジャスティスガンナー。

 二人は自分から当る様に接触し、刹那、巨大な隙を生んでしまった。

 エリマキ・ガンナーの水弾がジャスティスガンナーに襲い掛かる。

 咄嗟に避けようとするが、間に合わなかった。


 水弾の衝撃で、ジャスティスガンナーの意識が一気に消し飛んだ。

 さらにほたるんを吹き飛ばし、彼女は王利たちの側へと吹っ飛ばされる。

 これで、ジャスティスレンジャーはジャスティスセイバーを残すだけになってしまった。


 そのジャスティスセイバーは、コックル・ホッパーとの対戦に苦戦していた。

 もともと、迷いを持っていた彼のセイバーは、彼の意志に反応し紙装甲と化していたのだ。

 在る戦いで倒した敵が問題だった。


 その敵は己のクラスメイトであり、悪とは呼べない、ただの学生にしか見えない存在だったのだ。

 それを、改造人間だという理由だけでジャスティスセイバーは他のクラスメイトが止めるのも聞かずに打ち倒した。


 その後、彼の居なくなった教室は、今までの日常とはかけ離れる程淀んだ。

 その状況を引き起こしたのは、紛れもなくジャスティスセイバーであり、本当に、あの改造人間を倒すべきだったのか、今も答えが出ないままだったのだ。

 だから、折角手に入れた力も、悩みのせいでナマクラ以下に落ち込んでしまっていた。


 そんな武器でコックル・ホッパーに敵うはずもなく、すぐに追い込まれていた。

 折れ曲がったセイバーを投げ捨て、再びロード・セイバーと宣言、新たなセイバーがジャスティスセイバーの手に現れるが、即座にコックル・ホッパーの蹴りを受けひん曲がる。


「行くぜ、ジャスティス。砕け、セイ……」


「そう何度もやらせるか! コックル・キッ――――クッ」


 空中で一回転しての飛び蹴りに、ジャスティスセイバーは咄嗟に必殺を中断しセイバーを盾にする。

 しかし、やはり意志力が弱すぎた。曲がったセイバーはコックル・ホッパーの一撃を受け止めきれず、ジャスティスセイバーの腹へと諸共突き刺さる。


 呻きが漏れた。

 幸いにして柔らかかったセイバーが緩衝材となり意識を狩り取るほどではなかったが、受けたダメージは相当深い。


「こりゃ、ちょっとマズいかもですね」


 バグリベルレがジャスティスセイバーのフォローに入ろうとするが、ベルゼビュート・ハンマーシャークが邪魔をする。


「ちっ。仕方ないな。バグリベルレ、殿は私がやるから、逃げなさい」


 これ以上は敗色濃厚だと、ついに仮面ダンサーが動き出す。

 バグリベルレは悔しそうにベルゼビュート・ハンマーシャークを睨みながらも、この場での戦いは確かに無謀だと、王利たちの元へ下がる。


 同時にハルモネイアに撤退を伝え、ほたるんを回収させて逃走を開始した。

 追おうとしたコックル・ホッパーたちだったが、彼らを遮る様に、仮面ダンサー・スワンが立ち塞がる。

 その姿は追い詰められた正義の味方達にしては優雅に毅然として、焦りの一つも感じない。


「ここから先は、関係者以外立ち入り禁止。まずは私と公演を始めましょうか。題目は白鳥の湖。御代はあなたたちの命でいいわ」


 くるりと回転して仰々しくお辞儀をするスワン。

 その隙のない動きに、クロスブリッド・カンパニーの面々は言い知れぬ恐怖を覚えるのだった。

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