ジャスティスレンジャー VS クロスブリッドカンパニー3
仮面ダンサースワンが飛んだ。
衣類がはためくその姿は、場にいる戦闘員たちを魅了する。
無防備に見上げる戦闘員の群れに、スワンは着地と同時に斬り付けた。
止まることなく、まるで踊る様に敵を葬り去っていく。
無数にいた戦闘員がまたたく間に処分されていく。
それはさながら暴走竜巻とでもいうべきか。中心に飲まれるだけで消え去る悪夢の風だった。
倒された戦闘員が霧となって消えて行く。
思わず見とれるような動きでありながら、触れる手先は鋭く、彼女に狙われた獲物は悉くその存在を消し去られていた。
そして、スワンが王利たちの元へと辿り着く。
タンと地面を蹴り上げ前方宙返りを決めて王利とヘスティの目の前に着地すると、ゆっくりと立ち上がる。
そして背後から迫りくる戦闘員を見もせずに一閃して葬りさると、なんの感情もこもらない声で言った。
「バグリベルレから連絡を受けたわ。護衛対象のヘスティというのは、アナタでいいの?」
「その通りですよスワンさん! そっち頼みますっ」
スワンの声に反応したのは護衛を頼んだらしいバグリベルレ本人だった。
スワンはそちらを見て、初めて驚いたリアクションを取る。
「あら、居たの?」
「居ますよっ!? 気付いてなかったんですか!? お友達ですよね!?」
「ええ、おそらくね」
「おそらく!?」
驚くバグリベルレにクスリと笑い、スワンはヘスティに背を向ける。
「さぁ。あなた達の護衛は私に任せて貰いましょうか」
まさかあの噂の仮面ダンサーが味方についてくれるとは。王利は少し感動していた。
秘密結社の怪人として出会えばまず命の保証がない死神の様な存在だが、味方として現れてくれるのは、それだけで心強い。
ただし、彼の正体がバレなければという条件付きではあるのだが。
これはヘスティも同じ状況だし、バグリベルレがなんとかしてくれることだろうと期待して、王利はただただ見学するに留めることにした。
心の中でスワンに頑張れとエールを送っておく。
さすがにロシアのクロスブリッドカンパニーには仮面ダンサーの実力は知れ渡っていないのか、ただ敵が一人増えたといった表情はあれど、恐怖感は見当たらない。
王利は、多分初めてクロスブリッドカンパニーに同情の念を送った。
王利たちの安全は確保されたが、ジャスティスレンジャーは未だ不利な戦いを繰り広げている。
マンティス・サンダーバードがアーチャーの援護射撃を受け空中へと飛び逃げる。
放電しながら鎌で矢を打ち落とし、ジャスティスバッシャーへと迫る。
モーニングスターを振りまわして迎撃するが、マンティス・サンダーバードはこれを受け止め自身に帯電していた電撃を流しこんだ。
武器を伝って電撃がジャスティスバッシャーに襲い掛かかる。
「ぐあああああああああああっ」
「バッシャー!? くっ。こうなったら……」
ジャスティスアーチャーが自身の弓に矢を番え、能力を解放した。
「行くわ、ジャスティス。打ち破れ、アーチェリー! 必殺! ギルティアローッ」
光が矢を渦巻き包みこむ。
撃ち放たれた矢は周囲の空気を突き破り、真っ直ぐにマンティス・サンダーバードへと突き進む。
「斬り裂け、シザーズカッター」
マンティス・サンダーバードの鎌が黄色に輝く。
放電を始めた鎌を振い、ギルティアロ―向けて雷撃の鎌を打ちだした。
両腕から繰り出された雷撃とギルティアロ―がカチ合う。
しかし、惜しむらくは風と雷。風を引き裂きシザーズカッターがジャスティスアーチャーに襲い掛かった。
驚くジャスティスアーチャーを切り刻み、彼女の意識を刈り取ってしまった。
だが、マンティス・サンダーバードも無傷ではいられない。
雷撃の合間を縫って突き抜けたギルティアロ―が彼の肩に突き刺さっていた。
必殺の矢の威力はそれに留まらず、マンティス・サンダーバードの肩を突き破り、空の彼方へと飛んで行く。
それでも、彼らの戦いはマンティス・サンダーバードに軍配が上がっていた。
ジャスティスバッシャーも電撃を喰らった為か痺れて動けないようで、近づいてきたマンティス・サンダーバードに無防備な身体を晒していた。
動こうにも動けない。ジャスティスバッシャーは必死に身体を動かそうと呻く。
そんな彼を、マンティス・サンダーバードの鎌が横から襲った。
ただ、平手のように刃の横で殴られたため、切断されることなくジャスティスバッシャーは吹き飛ばされるに留まった。
「そこでしばらく眠っていろ。我々の目的はあくまでヘスティ=ビルギリッテにある」
ジャスティスバッシャーが悔しげに呻く。
しかし、マンティス・サンダーバードを止める術はもはや彼には無かった。
睨みつけるジャスティスバッシャーの視界から、マンティス・サンダーバードが遠ざかっていった。