ジャスティスレンジャー VS クロスブリッドカンパニー2
「「「ピーッ!」」」
まるで放送禁止用語が飛び交っているようだ。
口々にピーピー叫ぶ戦闘員たちがジャスティスレンジャー、クロスブリッドカンパニー構わず群がっていく。
もう、対戦とかする状況じゃなかった。
そんな戦闘員の数体が王利たちの元へとやってくる。
王利はヘスティを護る様にして戦闘員に蹴りを見舞う。
しかし、さすがは戦闘員。どれほどアホなことをしている秘密結社でも戦闘員の強さは人間の敵う相手ではなかった。
蹴りは直撃したが構わず近づいてくる戦闘員。
さすがにこのままじゃマズいと思った王利に、バグリベルレがフォローに飛んできた。
戦闘員の頭にダイビングキックを打ちこみ、さらに別の戦闘員をその場で竜巻旋○脚。
地面に降り立つと、ベルゼビュート・ハンマーシャークを警戒しながら王利たちの護衛に付いた。
「わ、悪い真由」
「仕方ないですよ。今回ばかりは二人は変身すべきじゃないのは理解してますからね」
やってくる戦闘員を蹴散らしバグリベルレは王利たちを戦場から遠ざける。
しかし、幾らもしないうちにベルゼビュート・ハンマーシャークが追い縋る。
「そんな雑魚を相手にしている暇があると思っているのか!」
「ああもう、助っ人はまだですかねっ。あいつ何してんだ全く!」
突撃と共に拳を振ってきたベルゼビュート・ハンマーシャークにバグリベルレは右手で受け止め右足で反撃。
ベルゼビュート・ハンマーシャークはこれに反応して逆手でガードする。
「スラッシュスタンピード!」
バグリベルレがベルゼビュート・ハンマーシャークと接敵したまま必殺技を使用する。
高速振動させた翅により、バグリベルレが高速突貫。逃げる暇すら与えずベルゼビュート・ハンマーシャークと共にコックル・ホッパー向けて突進する。
咄嗟に気付いたコックル・ホッパーが跳躍すると、そのままバグリベルレが壁に激突……する寸前で急停止。
手前に居たベルゼビュート・ハンマーシャークだけが壁に激突してしまった。
「ごはぁっ!?」
超高速の突進力を自分一人に肩代わりされ、ベルゼビュート・ハンマーシャークが壁にめり込む。
駅の壁が崩壊した。
その中から、五体満足ではあるがよろめいたベルゼビュート・ハンマーシャークが現れる。
「や、やってくれたなバグリベルレ……」
「おおぅ……あれを喰らって生きてますか……こりゃマズいかも……」
予想以上にタフだったベルゼビュート・ハンマーシャークにさすがのバグリベルレも戦慄を覚えた。
しかし、ダメージ自体はかなり受けた様子。もう少しで倒せそうだと身構える。
が、王利たちから離れたせいで、王利たちを護る盾が無くなってしまった。
「あー。スワンさんそろそろ来てくれないとヤバいですよ。もう、これ緊急事態ですし、王利さん、死線を越えてください(はぁと)」
もう、王利が変身してもいいかな? と護る気を失くしたバグリベルレ。
王利にせめて一言とばかりに可愛らしく言ってみる。
「お前は鬼かっ!?」
意味を理解した王利からの返事はつれないモノだった。
バグリベルレが本格的にベルゼビュート・ハンマーシャークとの戦闘に入ってしまったので、再びフォロー要因の居なくなった王利とヘスティ。
さんざん迷ったが、敵は待ってはくれない。
意を決し、王利は変身の言葉を唱えかけ、そいつに気付いた。
いつの間にか噴水の中央に立つ一人の女性。
丁度噴水の水がでない中心なので彼女は濡れる事はなかったが、なぜそんな場所に居るのか理解できずに吐き出しかけた言葉を王利は飲み込んでしまった。
なにせ、そこに居た女は只の女ではなかったのだから……
顔にオペラ座の怪人辺りに出てきそうなマスクを身に付け、露出度の高い踊り子のような薄い服に白のブラジャー……いや、あれは布を撒き付けたようなものだ。そして下半身にはパレオを身に付け、両手に曲刀のナイフを一対。
見た事は無くとも、王利は知っていた。
改造を施された時、ドクター連中から絶対に敵対するなと言われていた存在。
ある秘密結社に改造され、復讐の鬼と化した悪夢のような単独ヒーローたち。
その少女たちの名は……仮面、ダンサー。
ある秘密結社のドクターが造りだした最高傑作にして洗脳を受け付けなかった欠陥品。
仮面ダンサーアンにより組織は滅び去ったが、ドクターは逃げのび新たに仮面ダンサーを作りアンに復讐しようとした。が、その仮面ダンサードゥはアンの味方になってしまい、後に彼の造りだす改造人間全てが思い通りの怪人にならなかった上に正義のヒーローになってしまうという悲劇のヒロイン達。
ドクターたちは恐れと同情を交え、彼女たちをダンサーシリーズと名付けたそうだ。
今、ドクターが生きてるかどうかすら不明だが仮面ダンサーたちは各地で他の秘密結社の邪魔をしている。そして、時折新たな仮面ダンサーが現れるのだ。
その実力は、バグレンジャーが子供に思える程だという。
「さぁて……素敵な円舞を踊りましょうか」
どこか楽しそうな少女の声に、戦場が一瞬止まった。
全員の視線が少女に集中する。
そして……少女の舞踏会が始まった。