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秘密結社の勇者様  作者: 龍華ぷろじぇくと
ハルモネイア → 感情の芽生え?
100/314

100話突破記念・首領の野望

ついに100話に届きました。\(^o^)/

まぁ、特別編も挟んでますけどそれも一話分ということで。


というわけで、特別編として首領の現状をお送りします。

「フフフ、ハーッハッハッハッハッハ!」


 無数の画面が別々の場所を映す一室で、首領は大声で笑っていた。

 コントロールパネルを操作しつつ命令を打ちこんでいく。

 すると、目の前の画面に映る無数の人間たちが一斉に整列した。

 男女別に正方形型に並ぶその姿はある種圧巻である。


 彼らは今までは裸だったのだが、首領の命令により、今は黒い服を着用していた。

 そして、更なる命令で、一斉に右手を斜め横に伸ばす。

 一糸乱れぬその姿に、軍団を彷彿させたエルティアは呆然と画面を見つめていた。

 その顔には、戦慄が走っている。


「「「フィーッ!」」」


 画面の奥でそんな声が重なった。

 ミュートに設定されていた音声が首領たちの居る部屋に届くよう調整された結果だ。

 首領は膨れ上がった目玉をクリクリと動かし肩を振わせる。


「これはフラグではあるが……エルティア、言わせてくれないか」


「……え? あ、はい。どうぞ?」


「クククッ、ハーッハッハッハッハ! 圧倒的ではないか我が軍は!」


 額を鷲づかんで高笑いする首領。

 彼女は今、意志を持たない人間たちにハルモネイアを装い洗脳を開始していた。

 ただ、適当に器材を動かしていたら画面の人間たちが首領の言う通りに行動しだしたせいだ。


 そして今、迷える羊たちが飼い馴らされようとしていた。

 人間たちはただただ命令に従う。

 それは、まるでインセクトワールドの戦闘員たちとなんら変わらない状況だった。


 首領は昂揚して来る意志を押し留めるように両手を揉み込み、舌舐めずりを始める。

 インセクトワールドを立ち上げて以来の高揚感が首領をさらなる暴走へと引き込み始めていた。

 両手がキーボードに置かれる。

 その瞬間、カタカタと音を奏でるキーボード。

 エルティアが目を見張る程に自在に動きだす首領の指たち。


 それに合わせ、画面外にいた人間たちまでが牧場施設に集まり整列し始める。

 首領の口から笑いが漏れた。

 本人の意識していない笑いだろう。今までよりもなお不気味に、しかし楽しそうな笑い声だ。


 さらに首領の洗脳は人間に留まらなかった。

 機械たちも牧場へと集結させ、整列させてしまう。

 その中にはクレストガーディアンも数体見受けられたが、小型の機械のすぐ後ろに行儀よく並んでいる。


 異様な光景だった。

 余りに異常な光景に、エルティアは軽い眩暈を覚える。

 夢を見ているのだろうか? こんな現実があっていいのだろうか?

 こんな部屋一つで、ここからキーボードを打ちこむだけで、あれほどの人間と機械を操れるなど、そんな現実があっていいのだろうか?


 そんなことをやってのける首領に、付いていって本当によいのだろうか?

 エルティアは自身の身の振りに疑惑をもたげる。

 しかし、すぐに被りを振った。


 仮にも、自分の世界を救ってくれた勇者様が慕う上司なのである。

 王利が聞けば慕うわけないだろとか言いそうだが、彼女の考えを否定する輩は、今ここに存在していなかった。


「ククク、見よ。この一押しで、彼らは私の元、一つとなるのだ。復活せよ! 新生インセクトワールド!」


 首領が最後のボタン。ENTと書かれたキーを押しこむ。

 その瞬間、人間たちばかりか機械達まで揃って右手を斜め横へと掲げた。


「「「フィーッ!!!」」」


 一際大きな人間たちからの声に、エルティアは鳥肌が立つ程に慄いた。

 自分は、止めるべきだったのではないかと後悔するがもう遅い。

 一糸乱れぬ行軍を始めた人間、いや、新生インセクトワールド戦闘員たちが、指令室向け歩きだしてしまった。


 この施設の決定権全てが、ついに首領に掌握されてしまったのである。

 余りに上手くいった野望への第一歩に首領は高笑いが止まらない。

 しかし、彼女は順調過ぎた。そして、フラグを建て過ぎた。


 さらに言えば、今、彼女たちが一緒に行動していたのが何者かということを、失念していた。

 高笑いを始める首領の背後で、ドアが開く。

 しかし、彼女は気付かない。


 気付いたエルティアがそちらを見て声を失くすが、首領に伝える事は無かった。

 少しづつ、彼らは首領へと近づいていく。

 まさに悪の首領の如く笑いながらモニターにくぎづけの首領。


 ゆっくりと歩き、音を立てない彼らは首領の真後ろへと立つ。

 そのうちの一人、ドクター花菱が突然首領に背後から抱き付いた。

 首領の声が止まる。


 驚いた顔で首領は背後を覗き見る。

 油の切れた機械のように、その動きはぎこちなかった。

 そんな首領に、ドクターはニヤついた笑みを見せて言った。


「やあ。何を、しているんだい首領君。ボクには新生インセクトワールドとか聞こえたんだがねぇ。困ったなァ。インセクトワールドとは停戦しているボクらだけど、新生インセクトワールドなんて新結社が生まれたら、倒さなきゃいけなくなるねぇ。ねぇ? インセクトワールド首領……君?」


 ドクターの背後には三体のバグソルジャー。

 その体躯からは、皆疑惑の感情が立ち昇っている。

 かつてない戦慄に慄きながら、首領は答えた。


「い、いやだなぁ。冗談ではないか。はは。ははは……」


 新生インセクトワールド戦闘員、彼らは、結成後1分と立たず解体されたとか。

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