All Halloween
ジャンルがどんなのかわからなかったので、とりあえず恋愛にしときました。たぶん、恋愛じゃない!と感じるかもしれませんが、ご了承ください。
あと、約6時間、しかもアニメ視聴しながらの執筆なので、ダメダメすぎる文です。
それでもよいならどうぞ↓
Happy Halloween.
今日はハロウィンの日です。やっほい!
私はこの日だけ、ここに来ることができる。なんでかって?それは―――…
鏡に映る私。
中を切り抜いたカボチャの頭。
子供並の体全身を覆う白いシーツ。
…切り抜いた中に見える…明るい灯火…
―――私は、Jack-o'-lantemだから…。
***
数年前。
私は、このハロウィンの日に死んだ。
死んだ原因は…ハロウィンの日に出てくると言われる、魔女だ。
ハロウィンの日には、魔女や精霊、幽霊が出てくる。…その言葉は、迷信だと思っていたのに。
その日、私は恋人と一緒に町を歩いていた。
大通りから少し離れたところを歩いていた。その時、黒い衣装に身を包んだ女の子がいた。
魔女の仮装をしているのだろう。そう思って近づこうとしたとき…
少女が何か、黒く光る球を投げてきた。
本能的に悟った。これは、非常に危険なものだと。
この球が、最初から私に来ていたら、私はどうしていたのだろう。
しかし、私に来ることはなく……私の隣にいた彼に向かっていた。
とっさに彼を庇う私。目の前に迫る光る球。そして…
遠くに見える、幼い少女の体をした、醜い老婆の嘲笑。
ゆっくりと倒れていく世界。
最後に見たのは、彼ではなく、何故かそこにあった…カボチャだった。
死んだ私の魂は、幽霊の親玉的な人に拾ってもらった。
どうやら、あれは生者に嫉妬した魔女の仕業らしく、そのせいで私は存在自体が消えそうになっていたらしい。
輪廻転生の輪の中に戻れるかわからないが…戻れるまで面倒を見てやろうと言われた。
この世界に私を存在させるためには、核となる姿が必要だったらしい。なにせ、魂が死にかけているのだから。
そこで使ったのは、私が死ぬ前に見たカボチャ。
あれを核として私を再構築した結果…私は、男性しかいないと言われるジャックランタンになった。
まあ、これでも生きてられるだけ儲けものだ。と、森の中で幽霊の方たちと暮らしている。
…が、たった一日だけ、森の中にいられない日がある。
ハロウィンの日だ。
幽霊の親方は、甘いものが大好きだ。そのため、ハロウィンの日は甘いものを取ってこいと森を追い出されるのだ。もちろん、お菓子を持って行くまで入れさせてくれない。
だから、この日は皆必死になってなんとかお菓子を手に入れようとする。
幸い、この日は霊感がなくとも幽霊が見える日だ。
そのため、家々を訪ねたり子供の中に紛れ込んだりして、皆お菓子を求めるのだ。
私も、お菓子をせっせと集めている。そうしないと、追い出されてしまう。
一番お菓子を集めた人にMVPとして、何かをくれるらしいけど、特になろうとも思わない。
私の目的は、追い出されないことだ。一番になることじゃない。
まあ、去年のMVPの人のご褒美が私の嫌いなものだったってのもあるけど。
そんなこんなで、私は子供達に紛れてお菓子をもらうのだった。
***
「「「「Trick or treat!!」」」」
大勢の子供たちが、自分の入れ物を扉の前に差し出し、お菓子を待っている。
私もその一人だ。
家の主が、微笑みながらひとりひとりの入れ物にキャンディを入れていく。
もちろん、二つ以上貰おうとするならば、他の子からの鉄拳制裁をくらう。
そのためか、皆順番に並んでおとなしくしている。
私の番が来て、キャンディをひとつもらう。
もらったキャンディは四次元ポケット並になんでも入る白いシーツのような服のポケットに入れる。
このポケット、不思議なもので入れても入れても膨らまない。まさに四次元ポケットである。
キャンディをポケットに入れたついでに、数を数える。
ひー、ふー、みー…うん。結構集まった。去年よりはいい。去年はほんと酷かった。
「おい」
キャンディを取られ、親方に怒られ、なんとかほかの人たちに分けてもらったから良かったものの…
「おい!」
あのままだったら、私は確実に居場所を失っていただろう。いやー…ほんと、感謝してます。
「おい!お前!!俺様を無視すんじゃねぇよ!」
なんだよ…。うるさいんだけ…ど…。
少々怒った表情で私を見るその顔は…去年、お菓子を奪った子供達のガキ大将だった。
うわー……。どうしよう。…今年は絶対取られるわけにはいかないのに。
お菓子が取られたと思うと……寒気がする…。
「俺様を無視するなんて…いい度胸じゃねぇか…!お前の菓子……全部頂くぞ…!!お前ら!いくぞ!」
「「「「「おおーー!」」」」」
ガキ大将の子分達が、掛け声とともに叫ぶ。完全に皆の目が金に目が眩む大人達だ。おい。子供らしさどこ行った。戻ってこい。
一斉に私に向かってくる子分達。
幽霊……なめるなよっ!!
心の内でそう呟き、迫ってくる子分達を避ける避ける避ける。足を引っ掛けようとする奴は、足を踏んでやった。
勢いよく駆け、ガキ大将の目の前まで迫る。奴が目を見開くのがわかる。
ガキ大将は咄嗟に拳を振り下ろし…私はしゃがんで回避する。
そして、しゃがんだいきおいでバネのように空へと跳ぶ。
私の白いシーツが夜空にはためく。ガキ大将が、私を目で追い、驚いたように目を見張った。
それを見た私は……それだけで満足し、ニンマリと笑った。
奴の表情が驚いたまま固まるのが見えた。
私はそのまま……空中で右足を出し、ガキ大将の顔面に着地をした。
え?何が起こったって?要約すると、ガキ大将に近づき、拳を避けてジャンプ。そのあと、空中落下でガキ大将の顔面に着地って感じ。
私はガキ大将の顔面を蹴り上げ、もう一度ジャンプしてから、アスファルトの地面に着地した。
皆が私とガキ大将を見てポカーンとした表情をしている。
楽しいです。お菓子集めよりとっても楽しいです。
その時、ガキ大将がフラフラとよろけながら立ち上がった。
そして、鋭い視線で私を見たあと、周りを見渡し、叫んだ。
「こいつを………捕まえろぉぉおおおーー!!!」
とてつもない叫びのあと、一斉に子供達が私を捕まえるために走り出した。
…やっべ。マジやっべ。あいつら子供か。本当に。
必死で走る私。けど、どれだけ走っても引き離せない。むしろ縮められる。
先回りもされる。…いくらこいつらが町の子でも、これはないだろ!!
走って走って…。けど、次第に私も疲れてきて…。
って、私一応幽霊なんですけど!?子供ってこんなにすごかったですっけ!?
とっ、とりあえず隠れ場所……どこか…どこかにないの!?
***
「探せ探せーー!絶対逃がすんじゃねぇぞ!!…ちっ…。よくもあんなことを…絶対捕まえて制裁を加えてやる!!」
「…なかなか、物騒なことを言ってるね?そんなに気に食わないのかい?」
「ああ…。そりゃあ…って、パン屋の兄さんじゃないっすか。こんばんわ」
「こんばんわ。それはそうと、その相手ってのは誰なんだい?もしかしたら力に成れるかもしれないし」
「えっと……白いシーツにカボチャ頭の奴っす」
「あ、その子なら、向こうの広場の方に逃げていったよ」
「そうっすか!ありがとうございます!このやろー…。絶対とっ捕まえてやるからなぁあ!!」
「…もう出てきていいよ」
その人の言葉に、その人の座っているベンチの後ろの茂みから、私は顔を出し、ガサゴソと音を立てながら、茂みから出てくる。
シーツについた葉っぱを手で払い、その人の隣に座る。
「君も大変だったね。あの子に狙われて。あの子、毎年弱そうな子からお菓子を取り上げてるみたいで…。でも、あそこまで狙われるのは稀だよ。君、何かしたの?」
首をかしげ、私の方を向いて問いかけるその人。その人の懐かしい声に、私は胸が締め付けられる。
一目見ただけで分かった。この人は……私の恋人だった彼だ。
私が人間だったら、今、涙を流しているかもしれない。カボチャなのがありがたい。
「…まあ、あの子達は自分に良くしてくれる人には手を出さないから、ここにいれば万が一見つかっても手を出さないと思うよ。安心して」
その言葉に、コクリと頷く。
寝癖だけ整えた、少々ボサっとした髪。二重に、少々引き下がったタレ目。微笑んだ時にできる、右側だけの笑窪。何もかもが、昔の彼のままだった。ただ、少しだけ年をとったきがする。当たり前だけど。
「そういや、君のそのカボチャは、ジャックランタンを意識したの?カボチャ被るなんて、いろんな意味ですごいよ」
そういって、苦笑いをする彼。
その顔は、なんだかちょっと…苦しそうだった。
苦笑いがなくなると、静けさがあたりに広がった。
沈黙が続き…彼が口を開いた。
「……なんだか…さ。君、僕の知っている誰かに…似ている気が…するんだ…。でも…誰だかわからない…。思い出したいのに思い出せない…。とても懐かしい感じがするのに…思い出そうとすると、胸が苦しくなるんだ…。なんなんだろうね…?この感じ」
その表情は、私が感じたものよりも何倍も苦しそうで…。
私は、ただ死んで欲しくなかった。彼に、笑っていて欲しかった。そのために彼を助けたのだ。
けど…助けた結果、彼は苦しんでいる。
それが何よりも悲しくて…私は、いつの間にか指先に灯火を出していた。
きっと、私のとっさの誤魔化しだろう。けど、それが妙に明るくて……暖かかった。温度なんて、感じられるわけがないのに。
彼が近くで目を見開くのがわかった。
その表情を見たとき…なんだか、イタズラがしてみたくなった。
『Trick or treat』
そう書いた灯火を彼の目の前にグイと押し付けるように近づけ、『or treat』の部分だけを消す。
徐々にTrickの文字が大きくなりバラバラになっていき…五つの灯火になった。狐火や鬼火にも見える。
それが私たちを囲むように輪になり、クルクル回る。
どんどん速くなっていき…光の輪のようにしか見えなくなった。
その時、ベンチの角に灯火が二つ、ボッとついた。
それが合図かのように、色んなところで灯火がボッ、ボッ、ボッとついていく。
まるでダンスを踊るかのように灯火たちが揺れ動く。
私たちの周りの灯火も、他の灯火に合わせるようにスピードを落とし、リズムをとっている。
とても幻想的な風景に目が釘付けな彼。
その姿を横目に見て……なんだか、嬉しかった。小さい頃に戻ったような気がして。
「あぁぁぁあああああーー!」
その叫びとともに、灯火が一斉に消えた。周りが急激に暗くなる。
なんだろうと思い目を凝らすと、遠くからあのガキ大将が走ってきているのが見えた。
うわ。ここまで追ってきたよ。早く逃げないと…!
走り去ろうとする私に、彼が私の小さい肩を掴む。
何かと思い振り返ると…カボチャの口に飴玉を押し込まれた。
「Happy Halloween」
その言葉に嬉しくなって微笑む。
シーツの下に隠してあった、首にかけている私の唯一の生前のもの。
彼から唯一プレゼントされた満月の形をしたペンダント。それを二つに割、彼の方に投げる。
慌ててキャッチした彼は、それを見つめ…微笑んだ。
Happy Halloween
心の中でそう呟き、私は森の方へと走っていった。
ちょうど、帰る時間だ。この時間なら、森へ入り、逃げることができる。
私という存在が…彼の中に残りますように…。
***
「今年のMVPは…こいつだ!」
突然のことになにがなんだかわからない。えっ、なんなのこれ。
帰ってきたらいきなりクラッカーパーンってなんだよ。
「お前以外、皆ガキ大将の子分達にカツアゲやらなんやらされたらしくてな…。唯一逃げ切ったのはお前だけだ。だから、MVPはお前だ」
…MVP…?いらないよ?去年みたいな清めの塩100年分とかいらないからね?
「安心しろ。今年のご褒美は……肉体だ」
…ねえ、聞こえてますか?
私の人生は……まだまだこれからかもしれないです。
―――――Happy Halloween あなたも、この幸運が訪れますように―――――
実は、ガキ大将が狼男の仮装をしているとか、幽霊は魂を震わせてしゃべれるけどカボチャを核にしている主人公はしゃべれないとか、他にも設定があったんですけど、面倒なので省きました。
こんなダメダメな文を読んでいただき、ありがとうございました。読んでいただき、嬉しい限りです。
…まあ、私も息抜き的な感じで楽しめましたし、よかったです。…さあ、長編に取り掛かろうか…!
それでわ。