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8項目 「ダメ」と言われるとしたくなるよね?

◆二階

「『男の友人は目の前で倒れた。

 彼は男に何もする事が出来なかった。

 止めようとすれば出来た筈の男の死は止まりはしなかった。

 だから彼はせめてはと男の亡骸に花を一輪置いた――』我ながら良く覚えてていた」

 茂が何かの文を言う。

 横島の眉がぴくと動く。

「何それ?」

 聖が聞く。

「とある小説の一文さ。続きが出るのが楽しみで仕方なかった一冊だったよ」

「だった?」

「作者が途中で筆がとれない状態になっちまったんだ、で」

 茂は横島の方を見て言った。

「そうだよな。殺人小説家、横島大介?」

「ふむ、よもや俺の作品を知っているとはな。確か絶版になった筈だが」

「いや、うちの蔵書にあったんだ」

「でも何で殺人小説家?誹謗中傷のせい?」

「それならまだ何か言い訳出来たんだよなあ。曰わく理由は――」

 茂が言う前に

「良い殺人方法を考えるには同すれば良かったか?正解は実際にやってみれば分かる」

 横島はそう言った。

「ま、そうゆうこった。コイツは自分のネタの為に殺人をしてたんだよ」

「ふーん。ずいぶんと捻れた考えね。で、情報源は?」

「ハッキング」

「………」

「それで、正義の味方は俺が許せないか?」

 横島は笑う。

「いーや。別に」

 茂は言う。

「俺たちは正義の味方じゃないし、なる必要も無い。そんなものは警察がやればいい。それにどっちかと言うと」

 茂は昔を思い出すように一瞬考えに入って

「悪役かな?」

 そう結論を出した。

「悪役だと?貴様らは何をしたって言うんだ。万引き?恐喝?傷害?窓硝子を割る?出来てもこのぐらいだろう?それで悪役を名乗るのはおこがましいな――」

「六年前、銀行強盗及び殺人をした犯人グループが逃亡中に殺害された事件があった」

 晶が語りだした。

「未だに犯人は捕まっていない……という事になっている。だか実は犯人は捕まっていないのではなく捕まっていても放送出来なかった人間だったとしたら?」

「それがお前たち、か?」

 横島の結論に晶は首を振る。

「いいや、『たち』じゃない。それは『俺一人』でやった。当時小学校五年生か」

「暴露すると私はその一年後の通り魔のバラバラ事件だね。ミイラ取りがミイラってこの事を言うのかな?」

 聖が平然と言う。

「最後は俺か。七年前、とある銀行を襲った銀行強盗があった。そこに押しかけてきた強盗たちを細切れにしてやったよ。三人ともたまたま相手が犯罪者だったけどあの場所に都合よくあいつ等いなかったら善良な一般市民を殺っちまったんだろうな」

 茂が続ける。

「どうせそのモニターで見ていたんだろ?おかしいとか思わなかったのかよ。『普通の高校生はこんなに躊躇無く人に攻撃出来るものか?』とかさ。それに式一つ組むのだって結構疲れるんだぜ?あんだけばかばか使ってまだ使えるんだ。ただの学生なわけ無いだろ?さて」

 茂は言葉を切った。

「無駄な話はここいらにしとこう。そっちの田辺さんも回復したろ?」

「……!」

 田辺は待たれていた事に驚いた顔をした。

「そろそろ始めよう。膠着状態も飽きただろう――とりあえず先手必勝」

 茂が宣言と同時に周囲から水が湧く。

 水は球体になり勢いよく田辺に襲い掛かる。

 弾丸並みの威力を持ったその水球は横島の《発雷》で分解。水素と酸素になる。

「まだまだ」

 続けて晶の《轟爆》。トリニトロトルエンの爆炎が多くなった酸素を食いつぶしながら迫って行く。

 それも田辺の《空気層》と横島の《真空》の併用で遮られる。

「とりあえず」

 晶が《消毒》と《発火》をつかいその火炎を聖の《旋風》が巻き込む。

「息苦しい。とりあえず扉壊すか」

 言うなり茂の《突貫》が発動。多数の巨大な金属の槍が扉を穿ち、軽々ぶち抜く。

 これは銀行の金庫も貫通する極めて危険な過術。軍隊や警察でしか教わる事がない。

「お前らはどこの学校の生徒だ?」

『国立天上大学付属高等学校』

 三人が同時に言った。

「……なる程な」

 国立天上大学。天上大。幼稚園から大学まで全て揃っている学校。

 あだ名は『更生学校』。犯罪を犯した少年少女も快く受け入れる珍しい学校。

 しかも卒業までにはどんな不良も社会的に立派な人になって出てくる世間的に有名な学校。別に裏に繋がっているわけではないらしい。

 そこに通っているイコール犯罪者と言うわけではないのだがこの三人は全員元犯罪者らしい。

「あそこの生徒ならこの程度実力があってもおかしくはないな」

「……ボス、その学校はこんなのがゴロゴロ居るんですか?」

「まさか。俺らみたいなヤツらがたくさんいたら大変だろ。そんなにいねーよ」

 変わりに茂が答えた。

「まぁ例外だろう」

 晶が《投剣》を組む。半透明な剣を模した圧縮された空気が横島を襲う。

 横島はそれに《投剣》をぶつけて相殺する。

「さて、こんなものだろう。行く――」

 横島は《炎柱》を組む。三人の足元から火炎が噴き出す。

「あちち」

 茂が残った水を総動員して鎮火する。

 その間に横島は晶に、田辺は聖に迫る。

 横島は拳を握り、殴りかかった。

「む」

 晶は手の甲を使って受け流そうとして、失敗した。

 強引に軌道修正した横島の腕は軽々晶を吹き飛ばして壁にたたきつけた。

「さっきお前らが部下にやった攻撃だ。少しは効いたか?」

 田辺は聖に肉薄すると腹を狙って蹴りを繰り出した。

「このくらいは」

 聖は下に足を叩き落とした。

 が、迎撃された足を踏み込みに使って腹に拳打を食らわせる。

「うっ」

 うずくまる聖。

「死になさい」

 聖の頭上に田辺の踵が振り上げられる。

「うはぁ、やべぇ」

 《発雷》を組んで田辺に飛ばす。

 《絶縁》が田辺にかけられる。体の表面に薄い絶縁体の膜が貼る。

 そのうちに聖は転がって距離をとる。

「悪の秘密結社恐るべし」

「下らん事言ってると死ぬかもしれん」

「けほっ。やっぱプロは違うねー」

 両陣営再度集まって膠着状態。

「じゃあ仕方ない。疲れるけどあっちの式を組むか」

 言うなり三人が三人とも違う式を組みだした。

「させません」

 田辺が突っ込んでくる。

「組み上げるのが早いのも特技のうちなんだよ」

 式が組上がったようだ。茂の周りに水が湧く。

 先程ど違うのは指先に集まった水がどんどん小さくなっていく。

「まあ、初回だしとりあえず牽制射撃。当たったら死ぬかも」

「田辺!そっからずれろ!」

 不穏な気配が生じたのを察知したのか横島が叫ぶ。

 田辺はとりあえず斜め後ろに下がった。

「良い判断だ」

 茂の指先からレーザーのように水が噴出する。

 水は田辺の髪を穿ち壁を削り飛ばし穴を開けた。

 圧縮された水を飛ばす《水削》は要はウォーターカッター。

「こっちも完成っと」

 聖の頭上で眩い光を放っているモノご見える。

「威嚇射撃だ。向こうさんにも本気で来てもらわなきゃな」

「ほいほい。えい」

 軽い声と共に発射された高エネルギー体は膜のような物に覆われている。対象は横島。

「おいおい、プラズマとはまたたいそうなモノを出したきたな……」

 それなりの速度で出されたプラズマは壁に当たると壁を消し飛ばした。

「最後か」

 晶がごちゃごちゃした銃のような物を作り上げた。

「まあなんだ、取り敢えず一発目」

 言うなりレーザーのような赤い線が飛び出た。

 赤い線は壁をぶち抜いて消滅した。

「装填。再発射」

「させません」

 田辺の袖から飛び出た矢が銃を弾き飛ばす。抽籤という隠し武器。

「レールガン……」

 弾は普通の物、ただし火薬は使っていない。

 電磁加速砲とも呼ばれる。弾を加速させて飛ばすくらいだと思ってくれればいい。

「ちったあ本気を出す気になった?」

「面白い。よし、なら身元も分かった事だし本気で相手をしよう」

 横島と田辺は式を組み始めた。

「お返しだ」

 横島が組み上げた式は《突貫》。多数の金属の槍が素早く茂達を襲う。

「晶よろしく」

「まったく……」

 晶が式を組み、過術《突貫》が発動する。ただし、正面からぶつけるのではなく弾き易い角度で撃ち込み一個残らず正確に当てるという離れ業をやってのけた。

 続いて田辺が《爆鎖》を起動。三人をニトログリセリンを内胞した鎖が絡みつこうとする。

「やべ」

 茂が三人の前に《剛板》を出す。

 絡み付いた鎖は剛板を吹き飛ばした。

「さっきの外すんじゃ無かったかな」

「今更だな」

「ねぇ、私そろそろ限界っぽい」

『何ぃ!』

 見事にハモった。

「いや、だってあの変体の部屋で暴れちゃってるしさ。正直、もうだめっす」

「だめっす、じゃねえ!」

 言うなり笑顔で聖は気絶した。

 良く見ると負担を掛け過ぎたのか毛細血管が切れて鼻血が出ている。

 過術は体に負担を掛ける。あまり使いすぎると自己防衛なのか体が崩壊する前に気絶する。

「おいおい」

「こんなときには、おーいスティーブ」

『なんや?』

 さっきまで傍観していたスティーブが来る。

「運べるか?」

『お安い御用や』

 何処にそんな力があるのかスティーブは聖を担いで行った。

 身長の所為で多少引きずっているのはしょうがない。

「一人リタイヤか」

「ああ、これで対等。二対二だ」

 茂が不敵に笑う。

「だが俺たちにももうあまり余裕はないぞ」

 小声で晶が話しかける。

「まさかこんな凄いやつがボスとは思わなかったからなぁ」

 茂も小声で返す。

「しょうがない。こっちの身も危ないが使え。許す」

「お前もだよ。盛大にぶっ放せ」

「作戦会議は終わったかい?」

 横島が問う。

「ああ――バッチリな」

「これが最後の手札、かわされたら終わりだ」

 そう言って二人が式を組み始める。

 随分と複雑な式なのか少々時間が掛かっている。

「我々が待つわけないぞ?」

「変更は利かないでしょうから、これで終わりです」

 田辺が《轟爆》を放つ。

 横島が再度《突貫》を放つ。

 爆風を突き破って槍が二人を襲う。

「組んでる式を捨て、これを防ぐ式を組み直す事は出来ないだろう。チェックメイトだ」

「いいや――」

 茂はふてぶてしく笑った。

「ゲームは続行。でもってチェックの掛け返しだ」

 横島と田辺の目には目の前の爆風が急になくなったように見えた。

『な――!』

 更に田辺は景色が揺らいだように見えて、

「終わりだ」

 体が半分蒸発して絶命した。

 消え去ったのは茂の空間に歪みを作ってものを引き込む《歪曲》。

 田辺が蒸発したのは晶の摂氏三千度を超える熱線を放射する《熱動》。

「……どちらも国内では一般個人使用は禁止されている式か」

 一般個人使用は禁止と言うのは使用するのに免許がいり、なおかつ使用目的を国に報告し、許可を得なければ使用出来ない過術の事。

 《歪曲》は物の運送、鉄道などに使われているし《熱線》も調節さえすれば金属加工に使える。

「だが二回は無理だ。使えるのがわかった以上、二発目が撃てるとしてもやらすわけがない。思わぬ犠牲がでてしまったが今度こそこれで終わりだ」

 横島はとどめを刺すべく式を組始める。

「いーや、チェックはかけかえしたはずだぜ?」

 茂が式を組む。

「見た限り十秒は掛かった筈。無駄な抵抗は――何?」

「終わり。そいで、幕だ」

 茂が《歪曲》を発動させる。

「そんな莫迦な――!」

 肉が引きちぎれる音と共に横島は沈黙した。

 茂が使ったのは《回帰》。一個前に使用した式をどんなに複雑でも一瞬で組みなおす。

 横島が居た場所に残っているのは腰の辺りから上が不自然にねじ切れている男の下半身。

「えげつないな」

 晶が死体を蒸発させる。目撃者は共犯者のみにつき完全犯罪一丁上がり。

「《熱動》は蒸発しちまうからな。後が残らないからあんまり気持ち悪さを感じねー」

 「そうだな。――さて」

 晶は聖とスティーブを見て

「帰ろう。腹がすいたしな」

『そういえば自分違法生物なんやけどどないしょー?』

 茂はスティーブを見て

「んじゃまあ家にでも置いとくか。なに、親戚一同かなり変わっているから違法生物の一匹や二匹、いても問題なし」

「いやいや、マズいでしょ」

 いつ起きたのか聖が立ち上がっている。

「お前今の今まで寝てなかったか?」

「細かい事は気にしない。ああ、あんたらどっちか上着貸して。こんな格好じゃ外歩いただけで捕まっちゃう」

 確かに血にまみれて所々赤黒くなってる服で外を歩き回れば捕まる事は間違いない。

「寒いから嫌だ」

「冷えるから御免だ」

 二人からは拒絶の返答。

「人でなし!」

『ああ、この部屋の近くに上着があったはずや。勝手に拝借していき』

 探してみると言われた通りロッカーがあり、その中に上着があった。

「よく知ってたな」

『暇やった時にここのカメラやら何やらをジャックして見てたんや』

「助かった助かった。さあ、帰りましょ」

 多少大きめの上着を着て聖が現れた。

「お前生臭さ……」

「なによー!?」

 外に出る。そこは町外れの工場群。見慣れているわけでは無いが一応近場である。

 そして彼らのマンホールから始まった長い一日は終わった。


◆後日、生徒指導室

「で、見事に壊滅させてきたわけか。あの組織は最近やけに力をつけてきたからきっとみんな感謝でいっぱいだ。はっはっは」

「ははは……」

 三人は暖房も入っていない部屋の床に正座させられて五十分放置を食らってからの説教。

 科学教師の目は全く笑っていない。

「いや、あれは殺そうとしてきたから正当防衛が成立するはず……」

 科学教師は形だけの笑みを崩さず

「言い訳はそれだけか?」

「えーと」

「じゃあ罰を受けてこい。次は校庭を――そうだな考えとくから体操着に着替えてこい」


◆脱衣場

「あんにゃろいつか死なす」

 茂が悪態をつく。

「昨日も言ってたな」

 晶が適当に返す。

「ねぇ、私も着替えが一緒なのに何でそんなに反応薄いかな?」

 何故か一緒に着替えている聖が突っ込む。

「それよかこっち見んなよ」

「それこっちの台詞」

「安心しろ。お前の着替えなんか見ても興奮なんかしない」

「酷い……」

 微妙に傷ついた模様。

「でさ、着替えさせるんだから校庭何週かな?」

「かけようぜ。三百周」

「二百五十周だ」

「希望だけど、百周」

「オーケー。行くぞ」


◆再び生徒指導室

「決定だ。それじゃ校庭を五十――」

(よっしゃ少ない!)

(親がいないから掛け金は手元か。利益は無いが損も無い、か)

(うんうん。私は先生をしんじていたよ!)

「――分間正座しとけ」

『は?』

 三人の思考は停止した。

 現在十二月真っ只中。気温はなんとたったの三度。

 そして止まった思考は動き出す。

「殺す気か!」

「嘘はいけない事だと思います先生!」

「ついにいかれてしまったか……」

 三者三様に返す。

「大丈夫。このくらいで死ぬならとうにくたばっているはずだ。それと藤沢、何気に口悪いな」

 議論の結果。三人は半分の二十五分間座らせらると言う事で妥協した。

 普通はしないがしたのである。勇気ある彼等には敬意を払おう。

 そして町は今日も平和なのである。

一応終わりです。

読んでくださった方々、有難うございました!

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