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7項目 殺し屋家業は不思議だね?

◆二階

 扉が開く。

 中には男と女が居る。

 年はどちらも二十代くらい。

「ようこそブラックスージーへ。ここまでたどり着いた侵入者は君達が初めてだよ」

 男が言う。が

「腹減った〜。さっさと帰らねえと背中と腹の皮が張り付く」

「大丈夫だ。内臓とかの問題で干乾びない限りくっつく事は無い」

「ものの例えだた・と・え。聖は胸があるから張り付く事は無いよな……」

「会社だったらセクハラよ。アメリカだったら告訴よ告訴」

「ここはヤーパンで俺はヤパーナだから平気だ。それに友人を訴える聖ちゃんじゃないよね?」

 緊張感ゼロ。学校の下校時のような会話。

「誰も聞いてませんね」

 女が言う。

「むうう、まあ良いか。悪役っぽく不意打ちだ」

「了解」

 女が頷くと同時に《爆裂》が放たれる。

「やっぱり下っ端のより強力だね」

 聖が《空気層》を使う。

「まあ、ボスだしな」

 やる気無さそうに茂が言い

「攻撃パターンが下っ端と変わらんのはいただけないがな」

 晶が冷静に判断する。

 爆炎に混じって鏃のようなものが的確に三人を狙って飛来する。

 それぞれが《剛板》を使って弾き返す。

 女が突進してくる。狙いは茂。

「悪く思わないで下さいね。これも仕事ですので」

 女の過術《変形》が発動する。《剛板》で作り出されたチタン合金の盾から茂に向けて針が飛び出す。

「これで一人……」

「勝手に殺すな」

 茂の声が女の後ろからする。

「な!?いつの間に……!」

 驚愕を露わにする女。

 それもそのはず。ただの学生がプロの殺し屋の攻撃を避けるとは思わない。

「いつでも良いだろ。全く、危ないことをするなあ」

 女は下がって再度構え直す。

「自己紹介がまだだったな。俺は雨宮茂。あっちのが藤沢晶でそっちのが風見聖」

 いきなり自己紹介を始める茂。

 意味不明な行動のせいで動きが止まる女。内容を吟味していると

「おいおい、こっちが自己紹介したんだからそっちもするべきだろ」

 本当にただの自己紹介らしい。

 晶を見ると『またか』という表情で聖を見ると苦笑している。

「意図が掴めない……何がやりたいの?」

 とりあえず聞き返す女。すると

「うん?ただ名前が聞きたいだけだけど?」

「莫迦莫迦しい。そんなことをして何が――」

 言葉はその次の茂の言葉で凍りついた。


「俺は殺す相手の名前は知る事にしてるんだ。だから名前、教えて」


 今度こそ二の句が告げれなくなった。

 殺人のプロを殺す。聞き間違いが無ければ彼はそう言ったのだ。

 そして聞き間違える事はない。自慢じゃないが耳は良い。

「ははは、あははははは!」

 女は、心から笑った。

(面白い!私を相手に殺すと来た!)

「良いでしょう。私の名前は田辺景子――職業は殺し屋」

 女、田辺は名乗った。

「良い名前だ。そして田辺景子はこれより雨宮茂の『敵』だ。さあ、殺し合おう!」

 気だるげな茂の顔に獰猛な笑みが浮かぶ。

 田辺は仕掛けた。《変形》で先ほどの《剛板》からナイフを作る。

 茂も同じく《剛板》を《変形》させてナイフを作る。

「真似をしても殺せませんよ」

 田辺は一気に距離を詰める。

 頭を狙うフリをして心臓を狙う。

 茂は予測していたように心臓に迫るナイフを払う。

 焦らず突き、振り抜き、薙ぐが、全て打ち払われる。

 明らかにただの学生の動きではない。

「あなたは何者?」

 茂は答える。

「少々特殊で多々難のある勤労学生」

 茂が攻撃に入る。首狙いの一撃。

 田辺は反射で楽々受け止められる、その後カウンターで仕留める、ハズだった。

 ギャインと、音がしてナイフが手から剥がれそうになる。

「な!?」

 何度も言うが田辺はプロだ。ナイフの扱いにも慣れてるし、大体どの辺へ攻撃が飛んでくるのかも分かる。

 素人やそれに毛が生えた程度の腕、勿論同業者のナイフだって捌ききる自信があった。

 そして防御からの攻撃へ転向するのもかなり早いと自負している。体勢が崩れる事は無かった。

 だが、茂の攻撃は反応出来ても追い付くのがやっとだ。更に足元がぐらつく。

 どう考えても普通の学生が出来る事ではない。

 モニターで見る限りこの三人は普通に運動能力が高いだけの子供だったはずだった。

 しかしモニターは重要な地下室は写していなかったのである。

 見れていても聖の虐殺以外は見れなかっただろうが。

 更に茂は休憩を許さない。

 茂の過術《殺菌》で透明な液体が茂の手に出現する。

 正体はエタノール。アルコールだ。

 用途は専ら消毒。こんな場面で出すのはお門違いなハズだ。

 茂はエタノールを田辺の付近に撒いた。

 そして《着火》を使いエタノールに火を放つ。

 当然引火。エタノールはアルコールのため発火性が高い。

「しまっ……!」

 あっという間に周りは火の海に。

 嫌な予感がよぎった田辺はとっさに火の壁に飛び込んだ。

 幸いそこまで分厚いわけでも無かったがために多少熱いくらいだった。

 直後、今まで田辺が立っていた場所をナイフが二本通り過ぎる。

 刺さる対象を見失ったナイフは壁に突き刺さる。

 二本目のナイフが壁に当たった際に、爆散した。

 おそらく《爆鎖》の応用だと思われる。

「ふーん。避けれたんだ」

 茂が近付いて来る。

「結構自信あったんだけどな。試した事ないけど」

 プロの攻撃に匹敵する微塵も生かす気がない攻撃。

 しかし殺意は感じられ無い。まさにボールを放るくらいの気持ちでナイフを投げたということ。

「さて、そろそろ限界?」

 手のひらは照準を完全に田辺にあわせている。

「楽しかったよ。でも第一幕は終局かな?」

 茂はなかなか止めを刺そうとしない。

(何を言っているんだ……?)

 不思議がっていると茂は男に呼びかけた。

「高見の見物は終わりにしなよ」

 茂は手のひらを戻して

「俺は雨宮茂。あっちのは……まあ良いか」

 再度名乗った。

 そこでようやく田辺は茂の思考を理解した。

「アンタの名前は?」

(要するにこの少年は)

「こっちに来なよ。アンタが来来ないと第二幕が始まらない」

(続きをする気なのだ)

「……クッ」

 男が笑った。

「俺の名は横島大介」

 男、横島は名乗った。

「――いいだろう。チーム戦が醍醐味の第二幕を始めよう」

「そう来なくちゃ。晶、聖」

 三人は笑みを浮かべた。


『さあ、殺し合いを再開しよう』

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