2項目 階段って疲れるよね?
◆悪の組織 ブラックスージー最下層(?)
いきなり爆音。
もちろん下っ端の過術、《爆裂》。黒色火薬に衝撃を加えて起こる爆風が三人を襲う。
「学生相手にいい大人がマジになるなよ」
もう一度爆発。こちらは晶の《爆裂》。
「だが本気で殺す気だったぞ」
爆風が爆風を押している間に範囲から逃げる。
「もらい!」
そして下っ端に近づいた聖の《発雷》。スタンガン並みの電圧を男に叩きこむ。
「ぐあ!」
スタンガンの電圧では気絶する事はまず無い。
「殺す気でかかってきたみたいだけど、年の差かしらね?」
追って来れないように覆面を剥がして《号泣》を使う聖。
クロロアセトフェノン、いわゆる催涙ガスが男の網膜を刺激し呼吸により入り込みくしゃみをさせる。
別に後者は必要ないのだ事実、くしゃみを連発しているのでつらそうだ。
「最悪失明するが正当防衛だな」
「万一訴えられたら聖がやりましたって事にしよう」
「あんたらねぇ……」
「ん?案内板があるぞ」
見ると地下三十二階。
『最下層……』
三人ともいきなり落ち込む。
「そうだ、エレベーターか何かあれば……」
「莫迦だな。エレベーターなんて狭い空間でこいつ等と鉢合わせしたらどうするんだ?」
「しかもエレベーターは地下二十七階まで無いみたいだぞ」
「何でそんなに中途半端なのやら」
「そんなの、知らないわよ」
詰まる所。
『階段を上るのか……』
「そのくらいの体力はあるだろう?」
晶だけ平然とした顔だった。
◆地下三十一階
これまた広い空間の向こうに出口がある。
「何なのこの無駄ーな空間は」
「答えよう。それは我々のボスがでかい事が好きだからだ!」
通気溝から現れたのは
「またシ○ッカーかよ」
「ショッ○ーと言うな!貴様等生きて出れると思うなよ……!」
覆面の上からなので分かりにくいがどうやら下っ端は憤慨しているようだ。
「気にしているなら制服変えればいいのに」
「黙れ!そして死ね!」
雷撃が迸る。
「茂行け」
「お、俺ぇ!?」
「アンタさっき何もしてなかったでしょ」
この間0,1秒。
「ええと、確かこの式で……よ」
茂の前に膨大な水が湧いてきた。
「んで、こうだったかな?」
水は円刑になって電撃に立ち塞がる。
「莫迦め。水は電気を良く通す。そのくらいは今時子供でも知っている!」
そして当たった電撃は水中を奔り茂達を黒焦げに、しなかった。
「なに?」
何発も連続で叩きこみ、そして自分の式に不備は無いか確認する。
「無い。そんな、莫迦な!」
「ハズレ。水は水でも純水なんだよ。限りなくH2Oに近い純水は電気を通さない」
そしてニヤリと笑い
「今時の人なら普通知ってるぜ?」
そして膨大な質量の水を下っ端に叩き付けた。
「教科書持って勉強し直すんだな。ま、俺が言えた事じゃ……」
聖と晶は茂を無視して駆け出して
「伸びてるわ」
下っ端を一瞥し
「よし次の階に急ぐぞ。そろそろ腹がすいてきた」
あっという間に向こうの通路まで行ってしまった。
取り残された茂は
「おい、人がせっかく決め台詞言ってんのに」
「お前が人に説教垂れようなんざ一生早い」
「……それってできないじゃねえか」
「そう言っている」
「それは言いすぎだと思うよ。コイツ、テストの点数はいいんだし」
「だよな!聖はいい事言う〜」
「授業態度はサイテーだけどね。改善しなさい」
「これもいい事か?」
「……耳が痛いです」
◆地下三十階
「そもそも悪の組織って自分で言ってる所がおかしいよね」
「そうだな。善悪の判断は自分で行っているわけだから自ら悪と名乗るのはかなり変な考えだ」
「でもよ、悪い事をしているのが分かってやってんなら普通じゃないか。つーか何やってんだろうなこの組織」
「答えよう!」
今度は床から男が飛び出した。
「うわー」
「今度は下からか」
「次は横じゃない?」
「無視をするな!」
「お、お前は!」
「ふん、やっと気付いたか」
『ショッ○ースーツじゃない!』
三人は一斉にそう言い放った。
男の姿は黒いコートにズボンという普通の姿なのである。
「そっちか!」
茂が思い出したように言った。
「ああ、そういやこんなヤツが指名手配を受けていたな」
「そうだ、巷で有名な警官殺し。犯人の山崎だ」
「やっと名前がある敵キャラが出てきたな」
「感想それかよ!」
「ええと、じゃあ警官殺しってやばいじゃん!」
「何で?」
「ええとって言うな!しかも何でって……」
山崎は憤慨しているようだ。
「だって警察がもう五人も殺されちゃってるってニュースが……」
「そうだ。だから貴様等も殺させてもらう」
「本当に犯罪者が出てくるとはな」
「そうだ、だから……」
「なあ、警官を五人殺害って、あれは誤報なんだぜ?」
『は?』
「逃げよう、たって……」
「いや、正確には誤報じゃないんだがな。この前退屈だから警察のパソコンにクラッキングしてな、警察の日記みたいなのを見たんだ」
「たしかにお前にはそんな趣味があったな」
「警察のセキュリティかなり高いはずよね?」
「まあなに。抜け道?みたいなのがいろいろあるんだよ」
呆然とする山崎を置いて茂の話は続く。
「そこにな、『同僚がこけて打ち所が悪くて死んでしまった。山崎のせいにしておこう。幸い現場には術の後があったし、他の四人の警官も同僚にぶつかってこけてやはり打ち所が悪くて死んでいると解剖結果がきた。あいつは運がいいんだか悪いんだか。たかが無銭飲食の癖に警官を五人殺した事になってるからみんな捜査をしたがらない。罪は酷くなっちまったけどな』ってなかんじ。つまりコイツは無銭飲食犯なだけらしい」
「よく覚えているわね……」
「無銭飲食が連続殺人になるなんてアンタも可愛そうだな」
「何!?俺が殺したんじゃなかったのか……卑怯な警察め!」
そして茂は山崎の方を向いて
「だが無銭飲食も立派な罪さ。安心しろぼこって警察に叩きだしてやるから」
「くっくっく。だが忘れていないか?」
『何を?』
三人は同時に言い返す。
「ぐ、別に、別に俺はなぁ……」
男は手を前に出すと
「全く弱くは無いんだよ!」
三人の体が中に舞った。
「どうだ。くたばったか?」
しかし茂は起き上がった。
「ゲホゲホッ。なるほどね空気圧で鉄を飛ばす、原理はエアガンか」
「気圧高すぎ。死ぬかと思ったじゃない」
「良く考えてある。その袖に入っている筒で圧縮していたのか」
「な、俺の必殺を……」
隠し武器を見破られて動揺する山崎。
晶が右手を構えて
「お返しだ。勉強になった」
山崎の体がすっ飛ぶ。壁にぶつかる。動かなくなった。
晶の袖には金属製の筒が。
「飛ばしたのがゴム弾だから大丈夫だろう」
「ゴム弾でも当たり所が悪ければ死ぬぞ」
「一応殺人犯扱いなんだし正当防衛よ」
「じゃあ次行くか」
気絶する山崎を置いて次の階へ。
「それとその筒は何処で?」
「さっきの会話中に作った。なに、簡単なものだ」
『さいですか……』
◆地下二十九階
一直線の通路の先に次の階への扉がある。
「そろそろ飽きてきたわね……そこだっ」
壁に向かって《爆裂》を放つ。爆風が壁を破壊し、瓦礫の山が出来上がる。
『ぐわー!で、出番を〜!』
そして大勢の男たちの断末魔が聞こえた。
聖は指を瓦礫の方に指して
「じゃかしぃわ!きっちり予告どおり横から出てこようとしてたし!」
と、怒鳴り散らした。
もちろん瓦礫からの返事はもう無い。
「うわー、聖むごい」
「いつもの事だ。次行くぞ」
魔王になりかかっている聖を宥めつつ次の階へ。




