第二話 忘れたい過去
「仕事と私、どっちが大切なの!?」
お母さんのヒステリックな叫び声が聞こえてくる。
お母さん、やめてよ。
私はそう言いたくて、ベットから重い体を起こした。そして部屋を出て、リビングへと歩く。
リビングへ続く扉はかすかに開いていて、そこから光が漏れている。
「だから、何度も言っただろう?俺にとっては仕事が大切なんだよ!」
私はお父さんの怒鳴り声で足を止めた。
…お父さん?
お父さんの怒鳴り声なんて、初めて聞いた。
「…そう。でもね、あなたは仕事よりも、他の女のほうが大事だったりしてね」
…他の女?
お母さん、何言ってるの?
「…っ。それは…」
お父さん、動揺してる…。
何故?
「もう、我慢の限界よ。出て行くわ、この家を」
バァァン!
リビングの扉が大きく開け放たれた。
私の目の前には、目が血走っている女の人がいた。
誰?この人…。
女の人は私の姿を認めると、大きく目を見開いた。
「…花梨。」
紛れもなく、お母さんの声だった。
この人、お母さん?
いつも優しい笑みを絶やさなかったお母さんが、今は顔が醜く歪んでいる。
誰が、お母さんをこんな風にしたの?
お母さんは私を見て動揺しているようだったが、次の瞬間、無表情の仮面を被り、私を突き飛ばした。
「痛っ…!」
壁に体をしたたか打ちつけ、体に激痛が走った。けど、その痛みを無視して立ち上がる。
このままお母さんを追いかけないと、お母さんはどっかに行っちゃう。
でも、体が前に進まない。
「お母さん!」
私は必死で叫んだ。
お母さんは、私の叫び声に振り向きもしなかった。手早く玄関に置いてあった靴を履き、玄関の扉をあける。
「行かないで!」
バタンッ!
扉が閉まる音が響く。
私は体の痛みも忘れて扉に駆け寄り、扉を開けた。
扉を開けた先には…、漆黒の闇が広がっているだけ。
クラリッ………。
世界が回り、私は漆黒の闇に飲み込まれていく…。
ピリリリリ…!
パシッ!
私は重たい体を起こし、目覚ましを止める。
「ふぁ…。」
久しぶりに最悪な夢を見た。
お母さんが出て行った時の夢なんて、最近は見てなかったのに…。
今日も最悪な一日が始まる予感。
私はのそのそとベットから這い出し、制服をパパッと身に付ける。
その後、部屋を出て玄関に向かい、置いてある靴を確かめる。
そこには、いつも通り私のローファーと私の普段の靴しか置いていなかった。
「はぁ…」
一日のため息はここから始まる。
私は心のどこかで期待しているのだ。
お父さんとお母さんの靴が玄関に並んでいることを。
お母さんが出て行ったのは、五年前。
私が小学校の五年生の時だった。
あの頃は、毎日泣きながら過ごしたっけ…。
お母さんは今生きているのか、死んでいるのかさえ、わからない。
お父さんはというと、家庭より仕事が大事な人でめったに家に帰ってこない。
五年前、お母さんが出て行った後、お父さんは私にお母さんが出て行ったことは誰にも言うなとだけ言った。
だから、おばあちゃんの家や親戚の家に私を預けるなんてことは一度もなかった。
おばあちゃんや親戚は多分、お母さんが出て行ったことなんて知らないだろう。
ずっと、私は一人。
寂しかった。
誰かに気付いてほしかった。
けど、そんな私の気持ちにはだれも気付いてくれない…。
そしてこれからも、ずっとそうだろう。
「…朝ごはん食べなきゃ」
私はそう呟き、無理やり玄関から目をひきはがす。そして、台所へ小走りで向かう。
台所に着いたら、まず油をひいてコンロに火をつける。
その後に卵を割って、フライパンに卵を落とす。
卵を焼いている間に、キャベツをみじん切りにしてお皿に乗せる。
そうしている間に卵が焼ける。で、焼けた卵もお皿に乗せる。
そうしたら、朝ごはんの出来上がり。
私はいつも通りに食卓につき、目玉焼きを食べた。
チャラララ…。
リビングの時計が鳴った。
ん?八時…?
「あー!遅れるっ!」
授業が始まるのは八時半。
家から学校までは最低二十分はかかる。
今から顔を洗って、歯磨きをして、鞄に教科書入れて…。
あぁ…。間に合わない。
「どーしよー!」
私は叫びながら洗面所にダッシュして、バッと顔を洗って、歯磨きをして、鏡を見もしないで髪をとく。
そして、鞄をひっつかんで家を飛び出す。
「いっ…」
てきます、と言おうとして口を閉じる。
ダメだ。癖が抜けないな…。
あれから五年もたつのに…。
私は自嘲気味に微笑むと、駆け出した。
こんにちは~(^v^)
更新がかなり遅れてすみません^_^;
パソコン打つの遅いんです。
話は変わりますが、今すごくうれしいです(^◇^)
なぜかと言いますと…
私の小説を「お気に入り」にして下さった人がいたんです!
すごくうれしいですよ~。
励みになります(^^♪
またまた話が変わりますが、次の話では、ついに男子が出てきます!
楽しみにしていてください(^.^)/~~~