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【青春BL】王子様と呼ばれる先輩を餌付けしたら、毎日会いに来るようになりました。  作者: k-ing


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7.お昼の約束

 授業を終えた僕は、体育館を横目に自転車を走らせる。

 昼休みにあれだけ胸が高鳴ったのが嘘みたいに、今はお店へ急がなきゃという気持ちで頭がいっぱいだった。


 店に着くと制服の上からエプロンを身につけ、すぐに接客へ入る。

 夕飯前の店内は今日も大忙しだ。

 できたばかりのお惣菜を詰めて、商品のレジ打ちをして、お客さんの対応をして──気づいたらピークも過ぎていた。


「直、コロッケ一つ!」


 聞き慣れた言葉が聞こえてきた。

 今日も朝陽先輩がコロッケを買いにお店にきていた。

 いつもと変わらない見た目なのに、なぜが今日に限っては目を合わせるのも恥ずかしく感じる。

 お昼休みの光景が目に浮かび、朝陽先輩が近くにいただけでドキッとするなんてね。


「朝陽先輩、お待たせしました」


 僕はいつものようにコロッケを差し出す。

 でも、今日に限ってはコロッケを食べる様子はない。

 それにやけに視線が気になる。


「直、体調悪い?」


 僕の顔を覗き込もうと、朝陽先輩は姿勢を下げた。

 俯き気味の僕と目が合う。

 やけにドキッとするのはなんでだろう。


「あっ、いえ。そんなことないです」


 すぐに視線を上げると、心配そうに見つめていた朝陽先輩の顔はニコリと微笑んだ。


「それならよかった」


 そう呟いて、朝陽先輩は僕の手からコロッケを食べた。

 いつもと同じなのに、やっぱり恥ずかしくて手が震えてしまう。


「くくく、手元が動いていると食べにくいよ」

「なら自分で――」


 朝陽先輩はコロッケを食べやすいように、僕の手を握った。


「違っ――」

「んっ?」


 特に気にすることなく、朝陽先輩はコロッケをいつものように食べていく。


「朝陽先輩、今日何も手に持ってないじゃないですか!?」

「さすがに何度も同じミスはしないよ」


 朝陽先輩は僕の手から食べ終えた包装紙をクルクルと丸め、僕の手に再び戻した。


「今日も美味しかったよ」


 なぜ両手が塞がってないのに、僕の手からコロッケを食べたのだろうか。

 それだけが僕の頭の中に残っていた。

  いつものようにトレイへ置かれたお金をレジへ入れ、お釣りをトレイへ戻す。

 朝陽先輩の顔を見ようとしても、どうしても視線が上がらない。

 気づけば、トレイばかり見つめていた。


「じゃあ、また明日」

「ありがとうございました」


 そう言って頭を下げると、朝陽先輩は店を出ようとしてふと足を止めた。


「そうだ」


 その一言に、僕はようやく顔を上げた。


「なにか忘れ――」

「明日の昼も一緒に食べよう」


 一瞬、何を言われたのかわからなかった。


「あっ……はい」


 それだけ言うと、朝陽先輩は満足そうに笑って手を振る。

 帰っていく後ろ姿を見送る。


「また明日か……」


 その言葉を頭の中で繰り返しているうちに、朝陽先輩の姿は見えなくなっていた。


「今日は変だったな」


 昼休みからなんだか調子がおかしい。

 朝陽先輩の顔を見るだけで、どうしてあんなに緊張してしまったんだろう。

 首をかしげながら包装紙をゴミ箱へ捨てる。

 明日はちゃんと朝陽先輩の顔を見て話そう。


「直、ぼーっとしてないで次のお客さん来たわよ」

「あっ、ごめん!」


 慌てて笑顔を作り、僕は次のお客さんを迎えた。


お読み頂き、ありがとうございます。

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