↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【青春BL】王子様と呼ばれる先輩を餌付けしたら、毎日会いに来るようになりました。  作者: k-ing


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
35/40

35.久しぶりの先輩

 その後も朝陽先輩はお店にコロッケを食べにくることもなくなり、僕の日常は朝陽先輩と関わる前の日常に戻った。

 部活を引退すれば帰る時間も早くなるから、わざわざ寄らないよね。

 むしろ、毎日コロッケを食べていたから、少し体の心配もしていたし、ちょうどいいのだろう。


「なあ、王子先輩と連絡してるのか?」

「朝陽先輩? 特に連絡してないよ」

「はぁー」


 お昼ご飯を食べている僕に悠人はどこかイライラしていた。


「悠人のお弁当を作らなかったから怒ってるの?」

「おい、俺を王子先輩と同じ食いしん坊にするな」

「……悠人もよく食べるじゃん! さっきも僕の卵焼き――」

「直は静かにしろ!」


 そう言って、僕の口を押さえて、悠人はどこかに電話をしていた。


「あっ、王子先輩。ちょっと校舎の裏に来てもらってもいいですか?」

『なんで校舎裏? 悠人が来てくれれば――』


 微かに漏れる朝陽先輩の声に僕は懐かしい気持ちを感じる。

 それにしても、校舎裏に何か予定があるのだろうか。


「いや、さすがに俺でも三年生の校舎には入りづらいっすよ。二年からちょっとしたお礼があるので、すぐに来てください」

『ああ、わかった』


 そう言って、悠人は電話を切った。


「校舎裏に行く予定があるんだね」

「ああ、直がな!」

「……どういうこと?」


 首を傾げると、悠人はニヤリと笑って僕の肩を叩く。


「さあ、朝陽先輩が待っているぞ!」

「えっ……」

「ああ、弁当のことは気にしなくていいからな? 俺が食べてやる」


 悠人は僕を早く校舎裏に行かせるように、僕のお弁当を食べ始めた。

 相変わらずお節介なのか、勝手なのかはわからない。

 でも、それが悠人らしい気がする。

 僕は言われた通りに校舎裏に向かう。



「朝陽先輩と会うのは久しぶりだな。……ん? まさか悠人は弁当を食べるために朝陽先輩を呼んだのかな?」


 今日に限ってずっと悠人は僕のお弁当を見ていたのを思い出した。

 あいつも朝陽先輩と同じ食いしん坊じゃないか。

 バスケ部のエースは代々食いしん坊じゃないといけないのだろうか。

 そんなことを思いながらも、校舎裏に足を動かすが、次第に足は止まった。


「何を話せばいいんだろう……」


 いざ、会わない日が続くと、どうやって接すればいいかわからなくなる。

 僕はどうやって朝陽先輩と話していただろうか。


「ちゃんと説明すればいいか」


 僕はメッセージを送って、悠人が騙したことを伝えようとしたが、ポケットにスマートフォンが入ってないことに気づいた。

 これは直接言いに行くしかないようだ。

 少しドキドキしながら校舎裏に行くと、朝陽先輩はすでにベンチに座って待っていた。


「お前ら遅い……」


 朝陽先輩はベンチから立ち上がり振り返った。


「お久しぶりです」


 だけど、僕の顔を見てどこか気まずそうな顔をしていた。

 その表情に少し胸が締め付けられる。

 それにどことなく痩せたようにも感じる。


「悠人が勝手に嘘をついて呼び出してすみません」

「いや……大丈夫だよ」


 朝陽先輩はベンチにゆっくりと腰掛けた。


「すぐに連絡しようと思ったけど、スマホを教室に忘れて。なので、朝陽先輩も戻って――」

「直、ちょっと話をしてもいいかな?」


 朝陽先輩はベンチの隣を叩くと、僕に座るように言ってきた。

 僕は言われた通りに隣に座る。

 だけど、しばらく経っても朝陽先輩は話すことはなく、ただ正面をずっと向いていた。


「そろそろお昼休みも――」

「直、ごめん」


 立ち上がろうとした瞬間、朝陽先輩は僕の腕を掴んだ。

 その手はどこか震えていた。


「あんなに直が応援してくれていたのに勝てなかった……ごめん……」


 朝陽先輩は声を絞り出すかのように話し出した。

 その声は弱々しく、普段の元気な朝陽先輩ではなかった。


「朝陽先輩は頑張ってましたよ」

「うん……。でも、勝てなかった」


 僕はそんな朝陽先輩の頭を撫でる。

 弱っている姿を初めて見た。

 試合が終わった時も、朝陽先輩はみんなを慰めていたからね。

 そんなことができるのは朝陽先輩が誰よりも優しくて、人思いだからだ。


「直に合わせる顔がなくて、ずっと連絡も返せてなかった。本当にごめん」


 朝陽先輩の中で応援してもらっていたのに、勝てなかったことが辛かったのだろう。


「少し寂しかったですけど、大丈夫ですよ」


 そんな朝陽先輩を僕はただ慰めることしかできなかった。

 お昼休みが終わるチャイムが鳴っても、僕は朝陽先輩が落ち着くのを待つ。


「授業サボっちゃったな……」

「僕たち不良ですね」


 落ち着いた朝陽先輩に僕は微笑む。

 今まで授業をサボったこともなかったため、これはこれで新鮮だ。


「直には負けるな……」

「えっ……朝陽先輩、僕のこと不良だと思ってたんですか?」


 僕の言葉に朝陽先輩はクスクスと笑っていた。

 どこから見ても僕は真面目な模範的な生徒の一人だからね。

 ちゃんと授業も寝ずに受けているし。


「くくく、直に会って元気もらえたよ」

「それは良かったです」

 

 あんなに校舎裏へ来るのを躊躇ったのに、気づいたら僕たちは前みたいに話せるようになっていた。


「そういえば、あれからお母さんに親子丼作りましたか?」

「いや、まだご飯の炊き方が……」


 まだ朝陽先輩は親子丼を作っていなかったようだ。


「それなら空いている日にでも、ご飯の炊き方と親子丼の作り方を復習しますか?」

「本当?」


 朝陽先輩の顔がいつものように明るくなった。

 やっぱりどこか食いしん坊で、元気な姿の朝陽先輩の方が僕は好きだからね。


「約束しましたし」

「じゃあ、今週はどうかな? もう俺も部活ないし、受験に向けて勉強を始めるぐらいだから、時間はあるよ」

「なら今週にしましょうか。また連絡をしますね」

「わかった!」


 あまり長いこと授業を抜け出すわけには行かないからね。

 ひっそりと何事もなかったように戻らないといけないから、どこか緊張する。


「あっ、ちゃんとメッセージ返してくださいね」

「くくく、わかってるよ」


 朝陽先輩はチャイムが鳴るまで、しばらくはここに座っているらしい。

 僕はそんな朝陽先輩に手を振って、教室に戻ることにした。

お読み頂き、ありがとうございます。

この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。

よろしくお願いします(*´꒳`*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。