祭りのあと
にぎやかなお祭りの熱気がだんだんと冷めていく。
ほてった体が生ぬるい風にあたり、汗を払い飛ばした。
「あー、お祭り終わっちゃうね」
流し目で横にいる紗江に目をやってからぽつりと独りごちた。
場所は神社の境内。高い階段の上で終わってしまった祭りから少しずつ去っていく人々を2人で見つめていた。
「今年は随分と賑わったね。何かあったのかなあ」
聞こえないほど小さな声ではなかったはずだが、紗江は黙々と焼きそばを食べていた。いつものことなので気にせず続ける。
「まあそうは言っても昔より人は少ないけど」
あの頃よりも随分と暑くなったものだ。絶えず蝉が鳴いている。懐かしい気持ちになって、人の子と遊んだ遠い記憶を手探りで引き出した。そのときと同じように近くにあった石をそっと蹴ると、ころりと音が鳴った。
「今年が何年ぶりの開催だったっけ」
話しかけたはずなのに当たり前かのような沈黙が訪れる。ちらりと紗江をみると不器用に割られた割り箸をぴたりと止めた。透明なプラスチック容器の上に割り箸を乗せてゆっくりと咀嚼している。
紗江が口を開くのを待つほどの余裕が私にはなくてかまわず話し続けた。
「……ああ、ちがう。昔の祭りのままじゃないんだった」
「祭りの名前変わったものね」
咀嚼していた焼きそばを飲み込んだのか、紗江が小さな声でぽつりとつぶやいた。返事が返ってきたことに驚いて紗江をみる。その瞳は心なしか陰っていた。
「そりゃあ、あの頃から何百年も経ってるんだから色々変わるよなぁ。
たぶん、あの祭りの名前だって誰も覚えていないんだろうね」
遠い過去を少し懐かしむように遠くの空を見上げる。
綺麗でどこまでも果てしなく広がる晴天はいつの時代だって変わっていなかった。




