表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/15

採用決定

数日後。スマホの通知音が静かな部屋に響いた。

 震える指でメールを開くと、そこには信じられない一文が躍っていた。


【一次審査通過のお知らせ】

 ――厳正なる審査の結果、貴殿を一次通過といたしました。後日、対面での面接を行います。


「……えっ、まじで?」


 一瞬の歓喜は、すぐに底知れない恐怖へと変わった。

 俺なんかが、面接? 教室の隅で石像のように固まっているこの俺が、業界の大人たちと対面で話すなんて、土台無理な話だ。


 辞退の文字が頭をよぎる。けれど、その時画面の端に映ったのは、いつものママリスの配信アーカイブだった。


「……っ、もう、どうにでもなれ! ママと同じ世界に行けるなら、魂だって売ってやる!」


 半ば自暴自棄な決意を胸に、面接当日。

 慣れないヒールのある靴(なぜか玄関にあった)に苦戦しながら、俺は事務所の門を叩いた。


 正直、緊張で頭は真っ白だった。志望動機を聞かれて何を答えたか、自分の名前を噛まずに言えたかすら怪しい。

 ただ、「ママリスがいかに素晴らしいか」「彼女の言葉にどれだけ救われたか」を問われた瞬間だけ、何かが吹っ切れた。気づけば、酸欠になるほどの熱量で推しへの愛をぶちまけていた――それだけは、地獄のような記憶として残っている。


「……終わった。絶対引かれた……」


 抜け殻のようになって帰宅し、不採用通知を待つだけの数日間。

 しかし、届いた返信はあまりにも予想外なものだった。


【採用通知】

 おめでとうございます。慎重なる検討の結果、採用が決定いたしました。

 

 採用の決め手は、『声とルックスが規格外に良すぎたから』です。

 水瀬様には今後、VTuber≪ミナ≫として活動していただきます。


「…………は?」


 あまりにもストレートすぎる採用理由に、思わずスマホを落としそうになった。

 あの早口のオタク語りはスルーなのか。それとも、あの熱意すら「キャラ」として評価されたのか。


 とにかく、止まっていた俺の時間が、猛烈な勢いで動き出した。

 ≪ミナ≫。それが、女の子になった俺の、新しい名前。


「……やるしかない。初配信までに、完璧に準備しなきゃ」


 不安よりも、ママに一歩近づけた高揚感が胸を支配していた。

 運命の初配信に向けて、俺――ミナの物語が幕を開ける。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ