表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/15

それでもママはママ

頭の中が、ぐちゃぐちゃにかき混ぜられていた。

 尊敬する先輩と、溺愛してくれるママ。その二人が同じ人間だったなんて。これからは、どんな顔をして接すればいいのか、どんな距離で隣にいればいいのか。


 けれど、混乱の霧の向こう側に、一つだけ変わらない確かな光があった。


 あの日、絶望の中で目が覚めて、自分の体が変わってしまった恐怖に震えていた朝。

 すべてを失うのが怖くて、ネットの海を彷徨っていた俺に、生きる理由をくれたのは画面の向こうの彼女だった。そしてその彼女の正体は、かつて独りぼっちだった俺を、ただ一人見つけてくれたあの人だった。


「……俺は」


 俺は、先輩が包み込んでいた俺の手を、自分から強く握り返した。


「俺は、先輩にも、ママにも救われました。あなたが側にいてくれることが、俺にとっては何よりも嬉しかった。……だから、これからもずっと、側にいてくれますか?」


 その言葉を聞いた瞬間、先輩の瞳が大きく揺れた。

 いつもの配信で見せる余裕たっぷりの笑顔が崩れ、一人の「人間」としての、泣きそうなほど切ない、けれど心からの喜びが溢れ出す。


「……もちろん。当たり前だよ。ずっと、ずっと一緒だよ、水瀬くん……ミナちゃん」


 彼女の声は、もうママでも先輩でもなかった。俺を心から必要としてくれる、唯一無二のパートナーの声だった。


 窓の外から差し込む午後の光が、二人の重なった手を白く照らし出す。

 性別が変わって、名前が変わって、世界がどれほど姿を変えても。俺たちの絆だけは、もう二度と解けることはない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ