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重なる面影、暴かれる真実

配信終了を告げる無機質な通知音が響いた後も、俺は椅子から動けずにいた。

 震える指でマウスを握り、ママリスの過去の配信アーカイブを無差別にクリックしていく。雑談、悩み相談、ASMR――数えきれないほどの彼女の「声」を、俺は夢中で貪った。


「……やっぱり、そうだ」


 決定的な確信。

 彼女は、何気ない励ましの言葉の最後に、必ず「大丈夫」と付け加える。

 その一言の、絶妙な間と、少しだけ鼻にかかるような独特のイントネーション。


 数年前。誰もいない渡り廊下で、うつむく俺の肩にぶっきらぼうに手を置き、「お前は、間違ってない。大丈夫」と笑ってくれたあの声と、完全に重なった。


 俺は憑りつかれたように、彼女のSNSや公式プロフィールを遡った。

 好きな花、嫌いな食べ物、ふとした時に漏れる昔の思い出話。それらすべてのピースが、俺の記憶にある「桐生先輩」というパズルを完成させていく。


「……あの人が……俺の、ママ……?」


 脳内で、凛々しかった先輩の姿と、慈愛に満ちたママリスの姿が激しくぶつかり合う。

 なぜ、先輩もまた「女」になっているのか。

 なぜ、正体を隠してまで俺をあんなに執拗に甘やかすのか。


 恩人が、今の俺の全肯定者。

 その事実は、本来ならこの上ない救いのはずだった。けれど、今の俺を支配しているのは、底知れない「底なし沼」に足を踏み入れてしまったような、逃げ場のない恐怖だった。


「……先輩。どうして、教えてくれなかったんですか……」


 暗い部屋に、俺の細い声が虚しく響く。

 画面の中のママリスは、何も答えず、ただ静かに微笑み続けていた。

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