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零れ落ちた言葉

オフライン顔合わせは、表面上は何事もなく終了した。

 けれど、俺の胸の中には、消えない火種のようなモヤモヤが居座り続けていた。

 ――ママは、本当にあの「桐生先輩」なのか?


 答えの出ない問いを振り払うように、俺はいつもの雑談配信を開始した。


『みんな~、ミナだよ! 今日はいつも通り、のんびり雑談していこうと思います!』


・待ってました!

・今日もミナちゃんは癒やしだ……

・何話す? 何でも聞くよ!


 画面を流れる温かいコメントに、少しだけ心が軽くなる。


『じゃあ、今日は久しぶりに質問コーナーをやろうかな。何か聞きたいことある人、募集!』


 そう呼びかけると、コメント欄は凄まじい勢いで加速した。その中から、ふと目に留まった質問を拾い上げる。


・最近の悩みはありますか?


 『悩み、か……。そうだな。配信ではこうして喋れてるけど、実は昔から人と話すのが本当に苦手で。学生の頃もずっとクラスの端っこで浮いてたから……。もっと、自分に自信を持って話せるようになりたいなって、ずっと思ってるんだ』


 自分でも驚くほど、素直な言葉が出た。

 コメント欄には「大丈夫だよ!」「今、十分喋れてるよ!」という励ましの言葉が溢れる。


 けれど、その中に――ひときわ異質な一文が混じっていた。


ママリス:『ミナちゃんはね、そのままでいいんだよ。……昔から……あの頃も、ずっとそう言ってきたでしょう?』


 心臓がドクリ、と嫌な音を立てた。


 「あの頃」


 俺が水瀬として、誰にも認められず、暗闇の中にいた時代。そんな俺を肯定してくれた人は、人生でたった一人しかいない。


『……ママ?』


 震える声が漏れる。


『ママ……私のこと、どこまで知ってるんですか……? まるで、昔の俺を……知っているみたいに』


 それまで怒涛の勢いで流れていたママリスのコメントが、ピタリと止まった。

 数秒、数十秒。永遠にも感じられる沈黙。

 結局、その配信が終わるまで、彼女が再び言葉を発することはなかった。

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