大学と再起
春風がキャンパスを駆け抜ける頃、紗綾は新しい大学生活に胸を高鳴らせていた。
架空都市リヴェルにあるフェリス・リヴェラ女学院大学。桜並木の正門をくぐると、キャンパスは生き生きとした学生たちの声に包まれていた。
紗綾は中学・高校での休学を経て、この日を迎えた。過去の孤独や不安はまだ胸に残るものの、ヴァイオリンを通して培った根性と感受性が、彼女を前に押し出していた。
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挑戦の始まり
大学初日、紗綾は学部の案内を受けながらキャンパスを歩く。
「すごい…広い…」
図書館、講義棟、カフェテリア…すべてが新しい世界だ。
そして、念願だった大学オーケストラの入団手続きの日。
オーディション会場に入ると、そこにはセミプロレベルの学生たちが集まっていた。皆、弓の握り方、姿勢、音の出し方まで完璧に見える。
紗綾は一瞬、息が止まる。
「私…本当にここでやっていけるのかな…」
しかし、深呼吸して弓を握る。指先に伝わる感覚は、休学中に培ったものと同じ。音を出すと、体の奥に静かな力が湧く。
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仲間との出会い
練習が始まると、紗綾は同期たちと顔を合わせる。
•立花美月:明るく社交的だが、音楽へのこだわりは人一倍
•菅原凛:冷静沈着で、細かいミスも見逃さない
•森下優:おっとりしているが、演奏に対する集中力は抜群
初めての合奏では、指揮者の一声で全員が音を合わせる緊張感に圧倒される。
「うわ…みんなすごい…」
心臓が早鐘のように打ち、手が少し震える。しかし、演奏が進むにつれて、音が身体に馴染み、心が解きほぐされていく感覚を覚えた。
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ライバルと葛藤
紗綾の前に、大学オーケストラならではのライバル関係も現れる。
美月は演奏のセンスが飛び抜けており、指導者からも高評価を受ける。
紗綾は自分の演奏と比較して落ち込む日もあった。
ある日の練習後、紗綾は独りで練習室に残った。
「私も負けない…負けたくない…」
涙が頬を伝う。孤独は消えないけれど、競い合う仲間の存在が、彼女の根性に火をつけた。
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音楽がくれた自信
夏のある日、キャンパスの小ホールで初めての大学オーケストラ公演が行われた。
舞台袖で紗綾は心臓が跳ねるのを感じる。観客の視線、ライト、指揮者の目。すべてが圧倒的で、息を呑む瞬間が続く。
演奏が始まると、紗綾は無我夢中で弓を動かす。音が空気を震わせ、仲間の音と重なって美しいハーモニーが生まれる。
終演後、観客の拍手に包まれ、紗綾の胸に小さな自信が芽生えた。
「私…やれるんだ」
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友情の絆
紗綾は休学中に疎遠になっていた親友4人とも再び交流を深めていく。
•里奈は音楽的な助言だけでなく、生活面でも支えてくれる
•美咲はいつも明るく励ましてくれる
•優衣は厳しくも的確なアドバイスをくれる
•奈々は自由奔放な明るさで、紗綾を笑顔にする
一緒に食事をしたり、夜遅くまで練習したりする中で、友情はさらに深まった。
「一人じゃない。みんながいる」
そう思うと、心の奥の孤独が少しずつ溶けていく。
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挫折と学び
しかし、大学生活は順調ばかりではなかった。
学業との両立は難しく、夜遅くまでレポートを書きながら練習する日々が続く。疲労が重なり、体調を崩すこともあった。
ある日、練習中に弓を落としてしまった紗綾は、悔し涙を流した。
それでも、紗綾は逃げなかった。何度も弓を握り直し、音を確かめながら練習を重ねる。
「諦めたら、ここまでの努力が全部無駄になる」
大学生活の挑戦は、紗綾に根性と自己肯定感を教えた。挫折も孤独も、すべてが自分を成長させる糧だと気づいたのだ。
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希望の芽生え
秋が近づき、キャンパスの木々が色づき始める頃、紗綾は心の中で小さな希望を抱いた。
「この大学で、音楽を通して成長できる。私には、まだやれることがたくさんある」
孤独や不安は完全には消えない。けれど、紗綾は知っていた。
音楽と仲間があれば、私は前に進める。
こうして、紗綾の大学生活は、挑戦と友情、葛藤と成長の中で幕を開けた。
未来への一歩はまだ小さいけれど、確かに前に踏み出せた瞬間だった。




