自警団
次の日の夜 約束の時間にシルヴィは、警備隊員 五人と共に茶々屋を訪れた。
ジェラールが自警団の七人のリーダーと共にそこにいた。
ジェラールがシルヴィと自警団のリーダー達を紹介し、シルヴィが警備隊のリーダー達を紹介した。
「では まず 警備隊の警備体制を聞かせて下さい。」
ジェラールが言った。
「はい。警備隊としましては、王都の方の警備体制とも連携をとらなくてはなりませんので、今日 王都の警備本部 騎士本部 近衛隊本部へ行き それぞれの警備体制を聞いてきました。
近衛隊は城内と宮殿の周辺を‥警備隊は王都への出入り口を‥王都の騎士と騎士学校は例年通り応援を出すという事でした。
この街 ハーディの騎士学校も例年通り教官も指揮官も含めて応援に協力する事に決定しています。ただ騎士の称号を持っている者は、当日 国王陛下の前で騎士の舞を披露しなくてはなりませんので、終わり次第合流する事になっています。」
「シルヴィ嬢にお尋ねしたい事があります。」
「シルヴィで結構です。」
「では 俺もジェラールと呼んで下さい。シルヴィ あなたはさっき近衛隊の本部にも行って聞いてきたといいましたが、近衛の本部には騎士の称号を持っていないと入れないはずです。あなたは近衛の警備体制を、知り合いの方に聞いてきたのですか?それとも直接 行って聞いたのですか?」
「直接 行って近衛の総指揮官に聞いてきました。こう言えばあたしがどの階級の騎士称号を持っているかお分かりになりますよね。自分が関わる仕事ですから自分ができる最上の事をしたいといつも思っています。」
シルヴィはにっこりと微笑んだ。
「よくわかりました。それではシルヴィも当日は騎士の舞に出られるのですね。」
「いいえ 今あたしは騎士学校の指導官も務めていますが、警備隊の指導をしていますので今回は警備隊の方を重視したいからと 辞退しました。ただ騎士の舞の指導はしなくてはなりません。当日は大丈夫ですがニ、三日は
遅れる事があるかもしれませんのでよろしくお願いします。」
「任せて下さい。俺達は同志なんですから‥」
「ありがとう。」
その後 シルヴィ達とジェラール達は警備の配置や人数 強化する場所などを話し合った。
話し合いが終わり ジェラールが淹れてくれたコーヒーを飲みながら雑談をしていた。
自警団の一人がシルヴィに言った。
「今 警備隊のメンバーから聞いたけど、シルヴィは腕が立つんだって‥是非今度 お相手願いたいな…」
「機会があれば‥いつでも‥」
シルヴィは答えた。
「また始まった。あいつ 腕が立つと聞くとすぐあれなんだぜ‥」
自警団のメンバーが言った。
「やめておいた方がいいわ‥」
自警団のメンバーのルシアが言った。
「そうだな‥怪我をさせたら悪いからな‥」
「そうじゃないわ。あなたに言ったのよ ジョン」
「どういう意味だよ‥ルシア」
「わたし達 見たのよ‥ねっ セルジオ」
ルシアは隣りにいた男性に声をかけた。
それは二ヶ月位前の話しだという。〈海鮮亭〉という飲食店での話しだ。無銭飲食をしようとした筋肉質ながっちりした体格のハリーという男性を無銭飲食の現場にいたシルヴィが投げ飛ばした。
通報を受けたルシアとセルジオが現場に到着したその時、ハリーが中から放り出された所だったらしい。
「あの大きな体が 目の前に飛んでくるんですもの驚いたわ。一体どんな大男がハリーを店から放り出したのかと思っていたら、シルヴィが後から出てきて『外で お相手するわ。』って…
その現場の状況から、シルヴィがハリーを放り出したんだって悟る迄に数十秒かかったわ。そして悟った瞬間 今度は呆然として動けなかった。」
ルシアが言う。
「その間も 目の前でシルヴィは、向かっていったハリーを躱し その反動で顔が下がった首筋に手刀を入れ後ろ手に組み伏せていた。ハリーは観念しておとなしくなっていた。そのハリーに飲食代と修理代を海鮮亭で働いて返す事を承諾させたんだ。」
セルジオが言った。
「ハリーはその約束を果たし海鮮亭でそのまま働く事を望み、改めて雇われたのよ。そして今ではお客様同志の喧嘩を仲裁したり、難癖をつける連中を叩き出したりしているのよね。素晴らしい事だと思うわ。そうなれたのもシルヴィのお陰だって言っていたわ。」
「あたしはただ きっかけをを作っただけだわ。店主は人手を欲しがっていたし、ハリーは働く所を探していたから‥後は 店主とハリーの人間性だわ‥」
「ハリーを組み伏せたっていうのはシルヴィだったのか‥でも まぐれって事もあるからな。」
ジョンは言った。
「俺もルシアの意見に賛成だな。実は俺も昨日の昼間 見たんだ。例の三人組みがシルヴィを取り囲んで難癖をつけている所を‥だが三人組は次々にシルヴィに叩き伏せられたんだ。」
「ジェラール 助けに行かなかったのか!」
「俺もそうしたかったんだが、その暇がなかったのさ‥ほんの数分の出来事だったからな‥そしてシルヴィは何事もなかったように歩いて行ったんだ。」
「俺 やっぱり やめとくよ‥女性に勝っても自慢にならないからな‥うん…」
ジョンは言った。
「そいう事にしといてやるよ。間違っても勝てないからとは思ってないぜ。」
ジェラールが言うと皆んなに笑いが起こった。
自警団のメンバーとシルヴィ達は、とても陽気で気さくな仲間になっていった。




