出会い
シルヴィはハーディの街のモリスの元を訪ねた。
モリスとマリーは喜んで迎えてくれた。
シルヴィは騎士学校の指導者の職に就き、その他警備隊の体術も教える事になった。住まいはモリスがマスターとして勤める茶々屋という軽食カフェの近くになった。
王都への中継点であり東西南北を結ぶハーディの街は活気に満ち溢れていた。
老若男女全ての身分の者が集う街であるからこそ、より良い職を求めて各地から集まってくる人達も多い街でもあった。また秩序が守られ暮らしやすい街でもあった。
その訳をモリスに聞くと 自警団が組織されていて警備隊と一緒になって、この街の安全と秩序を守っているという事だった。
シルヴィがこのハーディの街に移り住んで半年が経っていた。
三ヶ月前に行われた近隣の騎士学校の生徒達が集まり、剣や体術 立ち居振る舞いやダンスを競う大会があった。いつも下の方の順位だったハーディの騎士学校の生徒達がシルヴィの指導のもと力をつけて上位を占める事ができた。そしてそのうち何名かは代表者として南部の大会に出場しそこでも上位入賞を果たし全国の大会に出場しベスト八に入った者、総合三位という快挙を果たした者もいた。これによってハーディ騎士学校の名前とその指導をしたシルヴィの名は徐々に知られていく事となる。
また警備隊員の間でもその適切な指導と確実な体術の腕は一目 置かれるようになっていた。
そんなある日 シルヴィは騎士学校の帰り、警備隊の詰め所に向かっていた。
そのシルヴィの行く先を塞ぐように、柄のわるい三人の男が立ちはだかり声をかけてきた。
「彼女 俺達と遊ばない?」
「遠慮しますわ。」
シルヴィはきっぱりと言った。
「そんな事言わずに付き合ってよ。悪いようにしないからさ‥」
「俺達と楽しい事しようぜ‥なっ‥」
そう言ってシルヴィの腕を掴んだ。
「離して下さい。」
シルヴィはその手を振り払うと言った。
「お断りしたはずです。行く所がありますので失礼します。」
シルヴィが行こうとすると一人がその前を塞いだ。
優しく言っているうちに言う事聞いた方が身の為だぜ。」
その言葉に構わずシルヴィは言った。
「ここを通して下さい。」
「通りたければ 力尽くで通るんだな‥」
「通れればの話しだがな…」
三人の男達は笑った。
「そうですか。分かりました。では そうさせて頂きます。」
シルヴィは言い終わると同時に目の前にいた一人を蹴り上げた。向かってきた一人に拳を入れ残りの一人を蹴り倒した。
「あたしはあなた達の言葉通りにしただけよ。まだ痛い目に遭いたい?」
シルヴィのその声音は男達に威圧感を与えた。
男達は捨て台詞を残し逃げて行った。
シルヴィは何事もなかったようにその場を去って行った。
その一部始終を反対側の通りから見ていた男性がいた。
男性がシルヴィが絡まれているのを見て
「また あいつらか‥」
そう呟いて助けに行こうとした時、シルヴィが三人の男性を次々に倒したのだった。
それは数分の出来事だった。男達は逃げシルヴィは何事も無かったように去って行った。
(参ったな…助けに行く暇もなかった。それにしても凄い腕の女性だな。)
男性はシルヴィの後ろ姿を見送った。
その夜 シルヴィはモリスがマスターとして勤めている茶々屋で夕食を食べていた。
その店でモリスの娘 マリーも勤めていた。
シルヴィはカウンターに座ってモリスやマリーと話しをしていた。
「この時間帯って女性客が多いのね。」
「そうか シルヴィこの時間帯は初めてよね。」
マリーが言った。
「ええ そうね 今日は色々やる事があったから夕食作るの面倒になっちゃって、此処で食べる事にしたのよ。そしたら女性客がいっぱいでしょ‥」
「それはね この時間帯にオーナーが来るからよ。」
マリーが言った。
「それじゃ 女性客はオーナー目当てって事?」
シルヴィは声を潜めて聞いた。
「そうよ。殆ど全員でしょうね。」
マリーも声を潜めた。
「オーナーってモテるタイプ
って事ね。」
「シルヴィも見れば納得するわ。来たら紹介するわね。」
マリーがそう言った時、女性客が騒めいた。
「オーナーが来たわ。」
マリーの声でシルヴィは入口をチラリと見た。
長身でスラリとしたスタイル涼やかな目許を持つ整った顔立ちの男性がいた。
「彼なら納得!皆んな夢中になるでしょうね。」
「でしょ‥」
マリーの呼びかけにシルヴィが、軽く頷いた。
オーナーは店に入ってくるとお客様に笑顔を向けた。
女性客の吐息が聞こえてきた。
オーナーがカウンターの方へ歩いてきた。
シルヴィを見るとオヤッ?という顔をした。
マリーはそれを見逃さず オーナーにシルヴィを紹介した。
「オーナー紹介します。彼女はあたしの従姉のシルヴィです。騎士学校の指導官をしているんですよ。」
「シルヴィ・バートです。初めまして‥」
「ジェラール・フォードです。シルヴィ嬢は警備隊の訓練と指導もしていらっしゃるそうですね。隊員の方達が言ってました。」
「ええ 騎士学校から依頼されましたので お引き受けしたんです。」
「でも 最初は大変だったんじゃないですか?」
「そうですね。騎士学校の方は女騎士の称号を持っていらっしゃる方が目の前に居られます。女性の生徒も指導官もいますので自然に迎え入れてもらえましたが、やはり警備隊のほうは反発はありましたね。でも一生懸命やっていましたら認めてもらえるようになりました。今では楽しい時を過ごしているんですよ。」
「それは良かったですね。でもそうなるでしょうね。シルヴィ嬢のあの凄腕を見せられたら、納得せざるを得ないと思いますよ。」
「えっ…!」
「実は 俺 昼間 三人程 倒す所を一部始終 見させて頂いたんです。」
「あれを見ていらっしゃったんですか?お恥ずかしい所をお見せしちゃいましたね。」
「オーナー 何の話しですか?」
マリーは聞いた。
「実は昼間 シルヴィ嬢が例の素行の悪い三人組に取り囲まれて、難癖をつけられている所を反対側の通りから見かけたんだ。助けに行こうと思ったらシルヴィ嬢が、その三人組を次々に叩き伏せたんだよ。その間 僅か数分だったな‥俺の出番はまるで無しだったんだ。」
「そうなんですか‥でも出番が無くて良かったんですよ。シルヴィは昔からそういう点では自立していましたから‥手を出していたら文句を言われていましたよ。何しろ彼女は料理より武術の方が得意なんですから‥ねえ シルヴィ‥」
「もうマリーったら‥今は少し料理もしているわよ。」
「でも 女性で 男性顔負けのあれだけの腕があるという事は、大したものだと思うよ。」
「ありがとうございます。」
「そうだ…明後日の夜は空いていますか?夜 九時から此処で自警団の話し合いがあるんです。出来れば君と警備隊からも何人か出席してもらえたらと思っているのですが‥俺 自警団の総長をやっています。半月後の国王の誕生日の警備について警備隊の人達と話したいと思っていたんです。」
「そうですか‥分かりました。あたし達としても国王の誕生日の警備を自警団の方達と協力してやりたいと思っていた所です。明後日の話し合いリーダー達と参加させて頂きます。宜しくお願いします。」
シルヴィはモリス達が終わるのを待って一緒に店を出た。




