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「ただいま…」

 小声で自分が家へ戻ったことを確認するかのように呟いて玄関戸を締めると、そこには美登里が笑顔で立っていた。

「お帰りなさい。お疲れになったでしょ…」

 岩口にとって何よりも疲れが取れるひと言だった。

「もう眠ったかと思ったてたよ…」

「宵宮ですもの、そんなことある訳ないでしょ」

 そう言われてみればそうだな…と岩口は感じた。町役場から残業で帰宅するのとは全く内容が違う。雪駄を脱ぎ、玄関の式台へ上がると、ひとまず三分の一が終わったか…という実感が岩口の胸中をヒタヒタと満たした。少し神社にスッポリと包まれた気分から解放された瞬間だった。

「子供達はもう眠ったんだろうな…」

 美登里に手伝ってもらい、宮司装束から普段着に着替えながら、岩口は当たり前のことを確認するように訊ねた。

「ええ…。散らし寿司、お召し上がりになる?」

「ああ…」

 美登里に勧められ、岩口は腹が空いていることに気づかされた。キッチンに入りテーブル椅子に座ったとき、岩口はようやく人心地がついた。包まれた紙[神]から(つか)の間、抜け出た気分になれたということである。^^

「明日も早いから、もう寝なさい…」

 散らし寿司を頬張り、ビールで喉を潤しながら、岩口は美登里に呟いた。

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