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祭り装束で神社に参宮した十数人の若衆が拝殿前で柏手を打ち、社務所へ上がってきた。この人数では神輿を担ぐことなど到底、至難の業である。二十年以上前は若衆が五十人ばかりいたから、担ぎ手にアルバイトを雇う必要はなかったのだが、今は日当を払い、参加者をネットで募集する・・といった時代になっていた。
「では、これから渡行する順序を簡単に説明致します」
紋付羽織、袴姿の切川がスクッ! と立ち上り、氏子総代らしい威厳めいた声で語り始めた。
「今年の渡りは早番となっております…」
中太鼓で参宮し、渡行は大太鼓と決まっていた。
「しばらく諌めて頂き、時刻となりましたら渡行をお願い致します…」
切川は軽く若衆一同に頭を下げて着席すると、若衆一同は勢いよく一斉に立ち上がり、境内へと下りていった。諌めるとは、鉦や太鼓を叩くことを意味する。
骨太神社に鉦や太鼓の音が響き始め、辺りは祭礼一色の雰囲気になっていった。
「やれやれですな…」
「ははは…祭りはこれからですよ」
岩口が珍しくダメ出しを切川に吐いた。




