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 そうこうして、例の菓子袋が一人に一袋づつ配られた。要するに参加した手間賃の替わりである。^^

 小祭りが済み、三月に入ると神武祭と呼ばれる神事がある。この神事の場合も小祭りと同じで小太鼓と小鉦を担いで骨太(ほねぶと)神社へと若衆が参宮した。神様は岩口をなかなか楽にさせないのである。^^ それでもまあ、慣れというのは不思議なもので、それが当たり前の繰り返しとなれば、岩口にはそれほど苦にはならなかった。三竦(さんすく)みの神様[紙]は、やんわりと岩口を包んで苦を与えないシステムを構築している訳である。^^

 骨太(ほねぶと)神社の若衆もコロナの影響で参加者が減少していた。若衆会を束ねる川宮は、今年、四十の坂を越えたばかりだったが、コロナで数年、祭礼が中止となり、その影響で弱つていた。この現象は、明らかに医学[鋏]がシャキシャキと神[紙]を切りまくった影響に他ならない…と宮司の岩口は考えていた。

 宮入りした小鉦と小太鼓を担いだ二人の若衆と他の数人は、境内の三俣[三本の木を組み、鉦と太鼓を通した竹棒を乗せて支える道具]に担いできた小鉦と小太鼓の某を乗せたあと、社務所の中へ上がってきた。これが今年の祭礼の始まりとなる最初の若衆会の集りだった。

「皆さん、ご苦労さんです…」

 切川が氏子総代としての普段とは違う声を発した。少し威厳めいた声で若衆達に軽く頭を下げる。その間に、一番若い若衆が社務所のキッチンで茶を湯呑に淹れて集まった若衆へ置いていった。

「ということで、例年通り担ぎ手は足らない員数の確保はアルバイトさんにて埋めさせていただきます」

 神輿(みこし)の担ぎ手は前後併せて最低でも三十人弱はいる。氏子である若衆は十数人だからOBが補助に入って担いだとしても当然、アルバイトが頼りとなるのは必然だった。

「アルバイトさんの募集は去年と同様で集めさせて頂きました。アルバイトさんには説明会を開き、参加者には祭礼用の衣類をお渡しし、社務所にて着替えていただく運びとなっております。神輿渡御の折りは、ご指導を御願致します」

 若衆はいわば祭礼のプロである。若衆がアルバイトをリ-ドすることで神輿の巡行は大過なく進行するのである。そこはそれ、その辺りの事情は例年のことだったから若衆達にも十分に理解されていた。

「雨天の場合は?」

 一人の若衆が氏子総代である切川にボソッと訊ねた。

「雨天の場合はアルバイトさんは参加されません。そのことは言っております」

「ややこしい場合は?」

 つまらんことを訊くヤツだ…という思いで切川は訊ねた若衆をジロッと見た。

「そういった天候の場合は、臨機応変に対処を致します…」

 切川はかろうじて逃げ切った。^^ 神武祭の参宮[渡り]も(とどこお)りなく済むと、次は砂持ちと呼ばれる境内の整地がある。この場合は氏子総代の切川と若衆会の責任で、岩口にはこれといった負担はなかった。

『宮司、砂持ちは終わりました…』

「ああ、ご苦労様でした…」

 仕事中の岩口に携帯が入り、岩口はひと言、労を(ねぎら)って砂持ちは終了した。神武祭が済んで三月から四月に入ったとある日の朝である。この日は神輿(みこし)飾りと呼ばれる神輿の飾りつけと中、大太鼓の飾りつけが行われた。これも宮司の岩口には直接、関係がなく、氏子総代を中心とした若衆会によって行われるのが常となっていた。その行事も例年のように終わると、いよいよ宵宮となる。宮入りの神事は岩口には関係なく行われるがね岩口には本殿に参宮する務めがあった。宮司姿に変身し、岩口はフツゥ~のサラーリマンから神様の僕に変身をする訳である。

「ドウノォ(ドウタラァ)~~コウノォ(コウタラァ)~~」

 宵宮の夕刻となり、宮司姿の岩口が本殿で祝詞(のりと)を上げ終え、社務所へとはいった。

「お務め、ご苦労様でした…」

「どうも…」

 氏子総代の切川が紋付き(はかま)姿で岩口を迎えた。遠くから宮入りする鉦や太鼓の音が聞こえてくる。上戸町は祭り一色に変貌しようとしていた。

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