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「あの手この手ですか? 人間対ウイルスの一騎打ちですね」
「まあ、そうなります。医学がガッポガッポと稼がず、真剣に対峙すれば、どぉ~ってことはないんですがねぇ~」
「過去にもいくつかのパンデミックを乗り越えましたが…」
「ミクロ世界のウイルスは甘くないですから…」
「なるほど…」
「私のところはそんなことはないと断言しますが、稼ぐ方がおられるのも確かです…」
切川の声が少し小さくなった。
「鋏にもいろいろある訳ですね?」
「まあ、悪どく医学に従事されてる方はいらっしゃらないと思いますが…」
「ガッポガッポと稼がれる方はおられる訳ですね?」
「まあ、医療の機器の設備投資や道具、薬剤も必要ですから、スタッフの人件費も含めて多少は仕方ないとは言えますが…」
「鋏で余り紙をシャキシャキと切られないように・・とは申しておきますが…」
「私なんかの小さなクリニックではどうしようもない訳でして、医療行政は国の対応次第ですから…」
「ははは…確かに…。切川さんにはご無理でしょうね」
「その通りです」
「宮司の私としては穏やかな三竦みの状況が続くことを願うだけです」
岩口と切川は重く考えなくてもいいのに重く考えながら腕組みをした。




