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「氏子に加入される件は、ひとまず忘れて頂いて、コトが落ち着いたとき、改めてお考え下さい…」
「はあ、そうさせていただきます。ボヤ騒ぎの原因が分かれば、家内と相談して、そうさせて頂きます…」
他人が聞けば、とても上司と部下の会話とも思えない遣り取りが岩口と砂場の間で交わされた。岩口は、神と関連付けてトラウマになってる訳ではないんだな…と感じた。
数日後、ボヤ騒ぎの原因が投げ捨てられたタバコの吸い殻だったことが警察の調べで判明した。放火の犯罪性は否定されたが、他人の家前の通路で火が点いたタバコをポイ捨てるのは未必の故意で犯罪性がある・・と警察は関連づけたが、生憎、物的証拠が消滅しており、捜査は打ち切られた。
その翌日の町役場である。
「ポイ捨てだったらしいですね…」
「そうなんですよ、課長。世の中、悪くなりましたね」
「確かに…。フツゥ~は人の家の前へポイ捨てません。それも火の点いたタバコですから…」
「まあ、考えようによっちゃ、私の方が捨てた人より幸せなのかも知れません。心が荒んでいないだけ…」
「それは言えます…」
岩口は砂場に頼んでおいた苦手な数値が溢れたデータ解析のファイルに目を通しながら砂場に軽く頭を下げた。




