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 そそくさと夕食を済ませた岩口は、手渡された一枚の古文書を(ふところ)に入れると寛ぐ間もなく書斎へと籠った。

『岩口吉綱…伊勢神宮内宮の神官だったご先祖が神事で歩み進んでいる最中に(つまづ)いて足を骨折したと…』

 岩口は大学時代、文学部で古文書(こもんじょ)学を専攻していただけあって、古文書の解読に関しては他者の介入を許さなかったから、一見しただけで読み解く能力に長けていた。

『ということは…骨折したあと傷が治癒し、神官に復帰したと…。だが、そのあと遠く離れた骨太(ほねぶと)神社に何故移り住んだか? だな…。いや、それより上戸町の骨太神社をどうして知ることが出来たか? だ…』

 しばらく伊勢神宮の資料をパソコン検索していると、ふと、あることに岩口は気づいた。

「そうかっ! 全国の神社を網羅する今の神宮司庁…いや、待てよっ! 今の時代と違い、全国にある神社の情報は享保の頃だから、そう簡単には得られなかったはずだが…」

 岩口は黒部峡谷のトンネル掘削工事で難関となった破砕帯に突き当たったのである。岩口[石]が岩盤[石]に突き当たったのだから、これはどうしようもない。^^

『まあ、仕方がない…。町立図書館で調べるしかないか…。だが、図書館に分かる専門書があるかな…』

 岩口家のルーツを探る道は益々、混迷の域に達していた。とはいえ、ここで諦めては神官を務める自分としては沽券(こけん)にかかわる…と岩口は思った。

『正月も済んだことだし、四月の例大祭までは(ひま)があるから、ここはゆったりと調べよう…』

 岩口はそう決意すると、マグカップの熱いミルクを(すす)った。別に決意するほどのことではないと思いますが…。^^

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