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岩口は骨太神社に伝わる埃塗れになった古文書を書庫から取り出し、手が空いた暇に任せて一枚、一枚と調べ始めた。書かれた毛筆体の文字の羅列に、こりゃ、職場の数値の羅列と変わらんな…と思いながら、岩口はメモ書きしながら慎重に進めた。進めていくうちに[岩口]という二文字を発見した岩口は、その周辺の文書の意味を理解しようとした。
『享保二年、岩口吉綱…伊勢神宮内宮…神官…禰宜…か。ほどほどの身分だったんだな…』
禰宜とは宮司→権宮司→禰宜→権禰宜→出仕とある神職の階級の中で、ほぼ中ほどの階級である。先祖が伊勢皇大神宮の外宮の神官だったことを岩口は初めて知った。だが、この離れた骨太神社にどうして移り住んだのか? いや、それよりも三河という中部地方の地から伊勢へ移り住むようになったのか? は、まったく分からなかった。そうこうして、岩口が暇に任せて古文書を調べ進めているうちに、辺りにはすでに夕暮れが迫っていた。
「あなた…そろそろ夕食ですよ」
書斎で古文書相手に調べ進める岩口に、美登里が入ってきて声をかけた。
「ああ、今行くから…」
行くつもりは数十分してから…と思っても、ここは素直に返事をするしかない…と、岩崎は暈した返事をした。
岩口が書斎から重い腰を上げたときはすでに三十分が過ぎていた。キッチンへ岩口が向かうと、悠馬と智花はすでに食べ始めていた。
「子供達には先に食べさせたわよ…」
「ああ、それでいい…」
これが、岩口家のいつもの緩いパターンである。^^




