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骨太神社の御祭神は天之常立神を主祭神とし、伊勢神宮、春日大社からそれぞれ分祀された天照大神、比売神を勧請して奉った三柱である。例大祭は、ここ五十年ばかり神輿の担ぎ手が不足するという事情で、総代会にて祭礼日の四月十四日に近い前の日曜祭りと変更されていたが、ここ最近の祭りブームに肖って、二年前から正規の四月十三日~十五日に戻されていた。神輿の担ぎ手不足の問題は、アルバイトを募集するという方法で解決を見た。ここで役に立ったのが岩口である。彼の町役場勤めを利用して近隣各町から人員募集を行ったところ、予想以上の募集があり、面接で採用する有難い事態となった。ただ、神輿のお練りは鳥居前のみとなり、御巡幸は車入れされたあと、楚々と決められた経路を巡る形式に変更されていた。岩口が宮司を兼務する骨太神社に限らず、日本全国津々浦々、どこの御祭礼も時代の推移による制度の改変を余儀なくされていたのである。
岩口の自宅は骨太神社の境内に建っていた。岩口が幼少の頃は神社の中の一角で寝起きしていたのだが、神社の老朽化に伴い、総代会で氏子からの寄付金+岩口の自己資金により現在の自宅が神社の敷地内に建設された・・という経緯があった。
「やれやれ、あとは後宴祭だけだ…」
美登里に手伝ってもらい、神主装束から普段着に着替えながら、酒が余り得手ではない岩口が本音を小さく呟いた。
「お疲れさま…」
美登里が柔らかく慰める。岩口家では毎年、こうしたサイクルが繰り返されていた。
二人がキッチンへ戻ると、悠馬と智花がゴチャゴチャと話し合いながら、美登里が調理した祭礼日用の散らし寿司を頬張っていた。
「もう、一杯っ!!」
偉そうに悠馬がお茶碗を智花に差し出す。
「はいはい! 食べ過ぎはいけませんよっ!」
智花が悠馬のお茶碗を受け取りながら、さも美登里が言うようなオマセな口調で悠馬を可愛く窘めた。美登里と岩口はその遣り取りを遠目に見ながら、思わず微笑んだ。




