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「先にお食事にされます?」
「いや…」
普段着に着替えながら、岩口は分かってるだろ、いつも風呂が先じゃないか…と思いながら、否定した。美登里は気づいたのか、それ以上は訊き返さなかった。
岩口は身体をいい湯加減の浴槽に沈めながら、目を閉じた。年はすでに明け、一時半過ぎになっていた。ようやく岩口に自由な時間が訪れたのである。
浴室を出ると、岩口はキッチンへ向かった。毎年のように、年が改まったあとの年越し蕎麦を啜るためてある。美登里は岩口用に残しておいた出汁の中へ椎茸、ネギ、蒲鉾などの具材を入れ、ひと煮立ちしたあと蕎麦を加えた。ちょうどそのタイミングで、岩口がテーブル椅子へ腰を下ろした。
岩口が年越し蕎麦を啜り終えたのはすでに二時頃だった。岩口はひと息つきながら、部下の砂場を羨んだ。
『いい正月をしてるんだろうな…』
と。^^
岩口の正月は正月であって、正月ではなかった。次々と、骨太神社の社務が待っているのである。元旦の朝は多くの町民が初詣に訪れるのである。ご苦労様です。^^




