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美登里が玄関の施錠を外すと、玄関戸が開き、切川と砥石が入ってきた。
「これ、今日の午前と午後の分です…」
宮司姿の岩口がお札箱を持って現れた。
「はい、確かに…」
箱の中の各戸に配るお札を確認し、切川はお付きの砥石に大風呂敷に包ませ、背負わせた。背負うといってもそれほどの重さはない。
「では、お願いします…」
言い回しを宮司風に変えた岩口が二人に軽く会釈をし、三人はお札配布へと出かけた。
師走の朝、いくらか寒いが天気は上々で、空は晴れ渡っていた。
「今日が済みますと、やれやれですな…」
切川が当たり前のことを当たり前に言った。
「はい、そうなります…」
岩口としては、これから正月だから慌ただしくなります…という気分だったが、敢えて否定しなかった。




