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次の朝、岩口は六時前に目覚めた。冬時間帯だから、外は漆黒の闇である。美登里は五時には起き出して、すでに朝食の準備をしていた。悠馬と智花はグッスリ…である。
「ああ、有難う…」
岩口が洗顔、歯磨きを終えると、すでにキッチン・テーブルの上には美味そうな朝食用の料理が並んでいる。美登里は週一回の料理教室の講師を勤めていて、料理は申し分なかった。食べ終えた岩口は、いつものインスタント・コーヒーを飲んだあと、ふたたび歯磨きを済ませて宮司姿に着替えた。
「お帰りは…」
「去年と同じ頃だよ…」
分かってるだろっ! と言いたいところをグッ! と我慢して、岩口は冷静に返した。昨日帰ったときに言ったぞ…と、訝しげに美登里を見た。
「そうでしたわ…」
美登里は昨日とは違い、口を開いた。こいつ、若年性認知症じやないだろうな…と一瞬、岩口は思ったが、それはないか…とすぐ全否定し、微かに哂っ(わら)た。
「おはようございますっ!」
玄関のチャイム音といっしょに、表玄関戸から氏子総代の切川の賑やかな声が響いた。美登里は慌ただしく玄関へと急いだ。




