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沈みゆく夕陽を見ながら、家族四人で露天風呂を楽しむ小一時間は、岩口にとって人生でそう何度も訪れない至福のときであった。
家族四人は、美味な海の幸の食事を楽しみ、二泊三日の旅を堪能して帰宅した。
人生とは上手く出来ている。楽しみのあとには苦が岩口を待ち構えていた。日曜が祝日だったこともあり、出発→土(泊)→日(泊)→月(帰宅)の行程は悠馬にとっても苦であった。学校の宿題を片づけていなかったからだ。悠馬は帰宅早々、勉強部屋へ籠りきりになった。
「お兄ちゃん、ねぇ~ねぇ~!」
「分かった、分かった! あと三十分したらな…」
智花にせがまれた遊びも、それどころでない悠馬にとっては苦の一つだった。なんといっても、宿題を忘れ、学校で立たされるのは辛かったからである。
「ゲームの約束、したのに…」
智花は愚痴を零しながら勉強部屋から出ていった。
『つぎの ことばに もじを ひとつ いれて ことばを へんしんさせましょう、か…。そういや、へんしんグッズをパパにかってもらうの、いいわすれたな…』
雑念が悠馬の心に巡り、いっこうに宿題は捗らなかった。




