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悠馬が智花に言ったとおり、確かに宮司としての務めは岩口の仕事である。ただ、上戸町役場の仕事とは一線を画していた。その上戸町役場で、一線を画さない仕事が岩口に飛び込んだりだから、世間は何が起きるか分からない。
「課長、建設部長がお呼びです…」
ベテラン女子職員で係長の餅尾弥希が課長席に座る岩口に小声でボソッ! と呟いた。本人は弥希と称している。^^
「あ、有難う…」
建設部長? …なんだろ? と首を捻りながら、岩口は訝しげに建設部へと急いだ。
「やあ、岩口さん。お呼びしたのには訳がありまして…」
岩口が部長室に入った途端、部長の野坂が笑顔で岩口を迎えた。
「と、言われますと…」
「実は、そこの空き地のスぺースに別館を建てることが本決まりになりましてね…」
「はあ、その話は管理者会で助役から聞き及んでおります」
「でしたか…。それなら話は早い。実は宮司をやっておられる岩口さんに地鎮祭の行事をお頼みしては? と町長に言われまして…」
「私でよろしければ、お務めさせて頂きますが…」
「そうして頂ければ、役場としては願ったり、叶ったりです」
恵比須顔の野坂は、両手で岩口の手をシッカ! と握りしめた。これが一線を画さない岩口の仕事となった。^^




