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「まあ、一杯!」
岩口は観桜会用に持参したポリ製のコップを切川に差し出した。
「ああ、これはどうも…」
素直に受け取った切川のコップに、岩口はこれも持参したビール缶のプルトップを開けると注ぎ入れた。切川は軽く頭を下げ、ひと口、グビッ! と喉を潤した。
「お口汚しになるとは思いますが…」
美登里は紙製の小皿に持参した重箱の料理を見繕って乗せ、割箸とともにブルーシートの上へ置いた。
「ああ、これは奥さん、どうも…」
「こうして観桜会が開かれるのも何年ぶりですかねぇ~」
岩口が満開の桜を見上げながら陽気に話し出した。
「そうですなぁ~。コロナの影響で五年ばかり中止でしたから…」
切川も岩口が見上げながら話す満開の桜を見上げた。




