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最近になり、ようやくコロナの蔓延も終息に向かいつつあったが、ここ近年の例大祭の中止は骨太神社の宮司である岩口にとって大きな痛手となった。今年の例大祭も担ぎ手のアルバイト代を例年より数倍引き上げて募集したほどで、四苦八苦したのである。岩口は考えなくてもいいのに考え始めた。
『神様[紙]は医療[鋏]に切り続けられ、すっかり弱ってしまわれた。しかし、医療の最前線の立場にある切川さんの場合はどうだ? あの人は氏子総代として例大祭を切り盛りされ、成功へ導いたではないか…。鋏で神様[紙]を切れるのに、逆に神様をフォローされたではないか…』
岩口は切川が神様を切れなかった理由を考えた。
『そうかっ! 宮司であるこの私[岩=石]が切らせなかったからに違いない。待てよっ! 他にも理由が考えられるぞ…。ひょっとすれば、大病院は医療[鋏]に敏感だが、切川クリニックという末端の小さな医院は影響を直接受けないし小さいからか…?』
岩口の疑問は益々、膨らんでいった。
『それにしても、医療はコロナでガッポガッポと人から金を吸い取り、肥え太った。切られた分、神様[紙]は減って衰え、全国各地の例大祭も侘しくなった。ここは、石である自分が何としても復興して元へ戻さなきゃならんっ!!』
岩口は常人がでは理解出来ない論法で、諄々(くどくど)と自論を正当化させた。ただ、この考えは他人に話せる内容ではないな…とも思った。持論を展開すれば、一笑に付されるのが落ちだからだ。
骨太神社の例大祭も無事終わり、岩口にとって次の課題は観光物産課の仕事を一日も早く理解し、熟せるようになることだった。特に、数字が羅列されたデータを解析することは重要だった。
「餅尾さん、この数字はコレを意味してるんですよね?」
「はい課長、そうです」
「やれやれ、少し分かってきました。これからもよろしくお願いします。砂場君には訊けないですから…」
岩口は相変わらずの敬語で、ベテラン女子職員で係長の餅尾弥希に頼んだ。
「はい…」
餅尾は素直に応諾し、自分のデスクへと戻った。このとき、課長補佐の砂場はイベント準備で外出中だった。




