23/56
-23-
差し出された杯に切川は銚子の酒を注ぎ入れた。
「岩口さんも二足の草鞋ですが、私も医者と氏子総代の二足の草鞋を脱いでは履き替え、履き替えては脱いでおります。ははは…」
「そうでしたね、そうでした。切川さんもご苦労なことです」
「この前、砂場という方が引っ越しのご挨拶でお見えになったんですが…」
「ああ、砂場君ですか。私の家にも来ましたよ。ご返杯を…」
話ながら岩口は飲み干した杯を杯洗で軽く洗うと、切川に勧めた。
「ああ、どうも…。なんでも砂場さんは岩口さんの直属の部下だそうで…」
グビリと杯を飲み干したあと、少し赤みが増した顔で切川は岩口を窺った。
「ははは…実はそうなんですよ。私も異動したばかりで、彼には世話になってばかりでして…」
岩が壊れて細かくなると石、石が細かくなれば砂と・・まあ、職場での岩口と砂場の上下関係は理屈に合っていた。^^




