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ここで平凡に推移している岩口周辺の三竦みの実態について、改めて整理してみよう。
岩口[岩=石]は骨太神社[神=紙]に宮司という職務を与えられ、スッポリと包まれる弱い身の上なのである。そうした弱い立場の岩口[岩=石]だが、総代会を召集する宮司の強い権限を利用して氏子総代である医者の切川[鋏]をやんわりと抑える強い立場にあった。早い話、骨太神社[神=紙]は、切川[鋏]に切られないように岩口[岩=石]を盾にして利用している訳だ。また切川[鋏]は、骨太神社[神=紙]を切りたいのだが、宮司の岩口[岩=石]にそれを阻止されている・・と、まあ話はこうなる。^^ この実態は飽くまでも現時点での推移であり、今後どのようにこの三竦みの関係が変化していくかは予断を許さなかった。
では、話の続きを進めることにしよう。^^
骨太神社の虫干しも滞りなく昼前には済み、社務所では参集した役員達による直会が行われた。直会とは慰労会のことである。料理は町内の料理屋、魚喜代がデリバリーで運んできた料理鉢の数々[鱧の湯引きと大根のつま・青紫蘇の添えもの、泥酢の小鉢、鰤と蕗の煮もの、海老・椎茸・獅子唐辛子の天麩羅、鰻の焼きものetc.]を酒の肴にして味わうだけだった。^^
「宮司、まず一献っ!」
「ああ、どうも…。私は日本酒よりビール党なんですが…」
「…でしたか。まあ、ひと口だけ…」
氏子総代である切川クリニックの切川が神主の岩口の席に近づき銚子の酒を勧めた。酒の燗は新しく役員に加わった門松が行っている。宮世話の構成は年番制になっていた。
「そうですか。では…」
勧められた酒を断るのも宮司の立場として如何なものか…と瞬断した岩口は、膳に置かれた杯を手にすると、切川の前へ差し出した。




