12/56
-12-
「他には?」
「他ですか…仏山さん宅だけだったと思いますが…。それで?」
「はあ、私も氏子にならないといけないんでしょうね」
「ははは…どうしてもっ! という決まりではありません。ご意思があればなって頂く・・くらいのお気持ちでよろしいかと思いますが…」
「はあ、そうですか。妻とも相談してみます。今は、引っ越しの準備で大わらわの最中ですから、また落ちつきましたら、もう一度、ご相談させて頂きます」
「はあ、それでよろしいかと…」
「相談は、それだけです」
「ああ、そうですか。いつでもお訊ね下さい」
岩口としては、砂場に一つ、貸しを作った形になった。これで、仕事で分からないことが訊きやすくなったことは確かだった。
二人は屋上の出入り口から、塒へ帰るトンビにでもなったような馴れた足取りで、スゥ~っと階段を回り下りながら課へと戻っていった。^^




