107/111
-107-
「ああ、有難うございます。ここも自在鉤付きの囲炉裏でしたが…」
「私の子若衆の頃はそうでした。天井も吹き抜けで煤で黒かったですね…」
「ああ、そうでした、そうでしたっ! 日没後は少し不気味でしたね…」
「はい! それでも、どこか賑やかで、皆さんに勢いがありました…」
「若衆会も五十人は優に超えてましたから…」
「アルバイトさんの必要もなかったです…」
「若衆会のOBの方々が加われば、それで十分でしたから…」
「あの頃の方がよかったですかね?」
「はあまあ、そのような…」
宮居に返した岩口の心中は、あの頃は鋏[医者]の刃で切れないほど紙[神]がブ厚かったたな…だった。時代の趨勢はある意味、医学を進歩させたが、デメリットとして、必要なく紙をサクサクと切っていたのである。神様もサクサク切られてはかなわない…と、岩口はそう考えたのだった。
時折り、小太鼓と小鉦の音が響いてきた。開帳神酒で気分を高めた若衆会の面々が、骨太神社に向けて近づいてくる音色だった。




