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 天界がそんなことになっていようとは夢にも思わない岩口の気分は、祭礼日だというのに気が重かった。落ちていた一枚の人形(ひとがた)を手に取って見れば、そこには何も書かれていなかった。裏返すと、不思議なことに骨太(ほねぶと)神社の[丸に(たちばな)]の印紋が押されていなかったからである。そのとき、晴れている青空に不思議なことに雷鳴が鳴り響いた。岩口は(いぶか)しげに空を仰いだ。

『こんなことがあるのか。神はおられるに違いない…』

 そんな思いがふと、岩口の脳裏を(よぎ)った。手には見たこともない一枚の人形が握り締められていた。

 天界である。

『いけませんよ。ご注意して頂かないと…』

『これは私としたことが…』

『そうですよ、常立神(とこたちの)神様…』

 二柱(ふたはしら)の女神に優しく(たしな)められ、天常立(あめのとこたちの)神は恥ずかしげに下界を見られた。^^

 そのとき、岩口は我に返り、拝殿を下り、自宅へと戻った。なんといっても神社境内に自宅があるというのは便利である。

「そのまま、お食事になさいます?」

「ああ、すぐに社務所へ戻るからな…。子供達は?」

「先に食べて、ダイニングでテレビゲームやってます…」

「テレビゲームか…。私の子供の頃は三次元の遊びだったな…」

「今はバーチャル・リアリティの時代ですから…」

「ああ…」

 頷きながら岩口は宮司姿のまま、美登里が作った鯖寿司を頬張った。なんといっても美登里が作る鯖寿司は美味だった。甘酢の漬け鯖と寿司飯に挟んだ山葵(わさび)が何とも言えないハーモニーを(かな)で、絶妙の味わいを(かも)し出すのだ。この一品を湯茶で味わい、岩口の気重はようやく(おさ)まった。気重は食べもので解決するんですねっ!^^

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